ドラッグは世界をいかに変えたか―依存性物質の社会史
- 作者: デイヴィッド・T.コートライト,David T. Courtwright,小川昭子
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 単行本
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そもそも少数民族の秘薬として使われていた依存性物質が、西洋人に発見され栽培され(ただ大半が土地をダメにするほどチカラの強い植物)、はじめは非合法に広まり次は合法になって代わりに税を課されるようになり、そして大企業が乗り出し、人口に膾炙するために甘味を加えられたり、広告で格好良さをあおられて、人々をさらなる依存性の高い物質へのと導く(強いべつのドラッグへの抵抗を無くし手を出しやすくする)。
依存性の物質は、社会的に学習しなければ摂取しないものだと言う。麻薬同様アルコールやタバコにしても好奇心がないとやらないし、習慣性を持つこともない。その伝だと、朝の出勤前にコーヒーを飲んだり、紅茶に砂糖を入れて飲みやすくするのも、健康やリラックス云々というが、単なる依存のバリエーションに過ぎない。
この例に習うと、いずれプロザックやいわゆる合成麻薬も、依存性物質として認知されていくに違いないと思われる。逆にタバコの次にアンチドラッグの標的になるのはなんだということにもなる。
そして、いまのグローバリズム経済体制のなかでは、新しくファースト・フードという高脂肪食品への依存があるだろう、作者は「近代資本主義の奇妙でいやらしい特質は、ある種の商品やサービスで私たちの感覚を欺き、次には損傷に対処するために別のものを売って、そもそも問題を起こした原因をさらに消費させる能力にある」と看破し、さらに他の文献からの引用で、「ダイエットこそ高度に完成した消費形態なのだ」と述べる。うーん。あのMc社ともうひとつのMS社が思い浮かぶ。両者は依存資本主義においては同一なのね。
今どきなキーワードの「癒し」は、実は依存症に置き換えると、また別の様相が見えてきて興味深いです。