ボーリング・フォー・コロンバイン

ボウリング・フォー・コロンバイン [DVD]
この間の大河ドラマで、巌流島でマトリックスばりのタイム・バレット(苦笑)があったそうだ。再放送を見てみよう。


どうでもいいこと
 映画をほめるのに、単なるパクリを何でもオマージュとか言うな。


今では、ドキュメンタリーがあるがままの事実を撮るだけとか、撮ったままをそのまま繋いでいるなんて、まさか信じているナイーブ(莫迦)な方はいないと思うけど。
このような確信犯の映画を、どう思うかが第一の問題であり、それを是とするかが第二の問題。で描かれたことを観た己自身がどう思うかが第三の問題。この三つを同じと考えるのも良いだろうし、相対的な批評が好きな方は映画と事実は別ものだからと安全地帯からほざくのもよいだろう。
まあ良い映画でしたといえば済むことなんだけどさ、でも最後にチャールトン・ヘストンのところに行くシーンは要らないよね。あそこがないと映画としてはオチがないことは確かだけど。無理矢理言わしているインタビューみたいでヤだった。あんなことをしなくとも、コロンバインの犯人たちの個人像に全く近づかずに銃社会についてアプローチ出来ているのにね。マイケル・ムーア自身が出演して進めていく構成が、ここでは逆に首を絞めたようだ。ユーモラスに進行するためのデブのオッサンだったが、ラストにどうしてもVS悪の象徴みたいになって、善VS悪みたいなハリウッド的なわかりやすさに陥ってしまったのは、策士策に溺れるというやつだね。
そんな分かりやすい構図や対立を煽るのがこの人のやり方じゃなかろうか。ケンカ殺法としてはオモシロイのだけど、非常に誘導的でもあるね。それに乗るか乗らないかじゃないのかな。私はあまり乗れなかった。ダラダラ描いていて最後にああいう風に持っていくのはねえ。そのために所々にライフル協会を小出しにする構成を作っているのは気に入らない。最初に結論ありきなところが正義漢めいている。
どうしても取り上げている題材が過激だというところだけに目がいくが、これは典型的な欧米型のドキュメンタリーだと思う。マイケル・ムーアアカデミー賞のスピーチでも、フィクションVSドキュメンタリーについてのレトリックなんかを使った内容を喋ったけど、ある意味まともで伝統的なアプローチの人だと思うよ。ユーモアにしても内容はともかく、センスがちょっと古いんじゃなかろうか。だってこの映画が1973年や1980年に作ったと言われても違和感無く納得すると思う。ドキュメンタリーの作りとしては新しさはない。NHKの番組とかに慣れていると、あの早さが特別に思うかもしれないが、アメリカだとあれが普通だと思う。余韻を残さない編集と音とうまくタイミングを合わせるところなど。
ロングランとかしちゃったから、細かい点が気になるのかもしれない。けれど911が無ければ、山形でしか上映されないんじゃないのか。それほど刺激的な映画を作る人ではないと思う。