エクスプローリング・ザ・マトリックス

エクスプローリング・ザ・マトリックス (SHO-PRO BOOKS)

エクスプローリング・ザ・マトリックス (SHO-PRO BOOKS)

マトリックス』についてSF作家やSF関係者が語る評論本。まーだからどうしたという内容。途中から斜め読みになっていったのですが、『マトリックス・リローデッド』の前に書かれていたようので、続編についての言及はなく絶賛の嵐ばかりで白ける。まさに便乗本だ。
しかしここまで、『マトリックス』を構成しているパクリを大々的に肯定するスタンスに立っているのに吃驚した。SFな人たちは基本的にヌルいと思っていたけど、ここまでなあ、画期的とか賛辞ばかり並ぶのもどうよ?難解さを引用して、ハードコアに仕上げているからイイみたいな論調はねえ。これが同年に封切られた『ファイト・クラブ』のB面だという指摘の欠片もなく、『スター・ウォーズ』は子供向けだけど、こっちはもっと深いみたいな調子ばかりだ。日本人はすでにエヴァ騒動を体験しているから醒めつつ読めるんだけどね。
興味深かったのは、ブルース・スターリングが『マトリックス』と現実社会の相似性の考察を、彼が参加した911直後のニューヨークで行われた世界経済フォーラムから紐解くエッセー。借り物のカッコいい外見が生み出す興奮と、それが消費されカネの成る木になることを浮かれずシビアに書いている。いわゆる『マトリックス』現象の本質をついていると思う。SF作家ケヴィン・J・アンダーソンは、『マトリックス』やゲームと現実の暴力との無関係さについての考察で、「暴力的な映画やゲームが犯罪を引き起こすと言うのならば、カード会社のCMは、カード破産に対して責任を負わなければならないはずだ」というのがおもしろかった。