新選組

新選組 [DVD]
1969:沢島忠 三船プロ
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD19176/index.html
新撰組の隊長、近藤勇三船敏郎が演じている。近頃の大河ドラマが描くと若者群像とかになる。別の角度から勤皇の志士を中心にして描くと、単に幕府の犬、テロリスト狩り組織とかになってりして描き方が180度変わったりする、だから時代劇は面白い。
この映画ではどんな切り取り方をしているかと思うと、新撰組が鉄の掟の殺人集団であるというのが全面に出てましたね。一般的に歴史の評価だとまあ明治到来を遅らせた人殺したちということになるのでしょう。
でもプロデューサーの三船プロ社長がそれで良いのかという話は別だと思うし、お客も納得行かないでしょう。娯楽作品として成立しない。なので、「激動の時代に真っ直ぐに生きすぎた男」を全面に出して描いている。これだと社長のキャラとも一致するので一安心。さらに悪役の部分は小林桂樹土方歳三が担当しているので、社長は「男は黙ってサッポロビール」とオイシイ役回りにしてもらっている。
それでもあまり突っ込むと矛盾が出てしまうので、演出の沢島忠があまり深く主人公の心情の葛藤を描かずに流してアクション部分を重視してストーリーを進めています。
だから歴史という大きなものに翻弄されている部分がよく出て観ている者をイヤな気分にしません。
この頃の大作映画だと、どうしても時代のせいか話が内向化していき、権威に盾突く作品が多く、どうしても反権力から内ゲバへと発展してしまったり、男と女のハナシに逃げてぐちゃぐちゃにしてしまうケースが多いのですが、歴史の大枠をきちんと捉えているので、矮小な話に落ち込まなくて済んでいます。三隅研次の「狼よ落日を斬れ」なんかの失敗もそのあたりでしょう。意地悪な言い方をすれば、この映画のような手法こそNHK大河ドラマのお手本だと思います。半端な企画もの洋風弁当よりも由緒正しき幕の内弁当のほうが美味いのです。
でもいってしまえば新撰組自体が主役にするには実は矛盾した存在なのですから難しいですね。どうしても最初は素朴で明るくても最後には陰々滅々の破滅に進んでいくので、滅びの美学として描いても娯楽作品にはならないですね。
この映画では近藤の一本木な性格に対して幕臣勝海舟日和見のいい加減だとしているのも面白かったけど、実際には二人の身分差があるのでやはり深くは突っ込めないし対立のドラマにもならない。
監督の過度のこだわりや解釈が無いが、きちんと史実のドラマ部分の押さえる部分は押さえて進めているので楽しめた。
もうちょっと江戸の田舎、多摩の出身の百姓が旗本の代わりに将軍を守ろうとして歴史の波にのまれていったという部分が描けたら深くなったのにと思う。それだと現代的な解釈なのかな?加藤泰大島渚という京都の人間からだと、京の都に来た関東の田舎百姓の殺人集団めがという解釈になるのだろうね。その辺の違いが面白かったりする。