天下の伊賀越 暁の血戦

1959:松田定次 東映京都
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD26440/index.html
途中まで観ていてさ、これはもしかして、黒沢明がシナリオを書いて、森一生が監督した、「決闘鍵屋の辻」と同じ話かと気づいた(いやこっちは観てないけどね)。
さいきん時代劇病が悪化して、このあいだ剣豪列伝のような本を読んでいたのよ。そんでこの映画の主人公、荒木又衛門のエピソードで、有名な伊賀上野でのあだ討ちの話が出てきて、ようやっとああこれなのかとアタマの中で繋がった。こういう講談ネタとか時代劇の有名なものがいままで繋がらなくて困っていたのですね(困ることじゃないだろう)。荒木又衛門が柳生十兵衛の弟子だったとかの基礎教養があると理解度が違いますなあ(隆慶一郎の「吉原御免状」の続編にもエピソードとして出て来たような気もするが忘れた)。…どうでもいいことなのかも知れないけど。
しかし市川歌右衛門と月形のオッサンの芝居の臭さは素晴らしいですなあ。愁嘆場での見得の切りかたなどすごいなあ。この臆面も無さがいいね。
それを淡々と撮っていく松田定次の凄さよ。単純なカット割とアクション繋ぎだけでここまで面白くなるのだから。これぞ映画の教科書ですね。ここまで演出を単純化して飽きない演出というのは至難の技だと思う。要するに寄り引きのサイズとタイミングがものすごく計算されているのですね。職人芸としか呼びようがない。スタッフ、キャストが分かりきってやっている。様式美というのではなく、簡潔な様式であること自体が美しいのですね。スタイリッシュではなく、さりげない佇まいそのこと自体が美しい。ある意味枯れた完成形だと思いますね。
「端正な画面と視線の交差とアクション繋ぎにおける映画の制度が云々」とかストローブ=ユイレなんか褒めているヒマがあったら松田定次を観ろよ。
岡田英次のイヤらしい悪役が良かった。