映画はやくざなり

映画はやくざなり

映画はやくざなり

著者が生前、小説新潮に書いた脚本家生活の「わがやくざ映画」人生、映画芸術に書かれた『あの夏一番静かな海』に対する脚本家としての怒りと見方を示した「秘伝 シナリオ骨法十箇条」、未映画化のシナリオ「『沖縄進撃作戦』」で構成される。「昭和の劇」を読んでいないので比較は出来ないけど、おもしろいです。
仁義なき戦い』はある意味では作者にとっては通過点にしか過ぎないし、実録ものは所詮、任侠もののアンチテーゼなので長く続かないと思っていたのは、現場の方々の共通認識だったようですね。個人的には、『顔役』のシナリオで深作と揉めて、「あとの直しはてめえでやれ!」と言って帰ったら、深作が血を吐いて倒れてしまって、部屋で困っているとのそりと、「エー、石井でございますけれどよろしゅうございますでしょうか」と石井輝男が現われ、さっさとホンをまとめて撮ってしまったエピソードが笑える。
「秘伝 シナリオ骨法十箇条」は古いかもと本人が思いながらも、長い間シナリオライターたちが練り上げてきた日本映画の劇作術の肝を余ることなく記録として纏め上げているので必見です。いまはたぶんこれだけじゃ足りないのだけどもね。いまは映像と音響が良いので、「一ヌケ、ニスジ、三役者」なのだろうけど、でもやはりスジが良いに越したことはない(当たり前か)。基本がクリア出来ていない映画は結局つまらないことも確かだ。
笠原和夫やくざ映画が嫌いだと言っている事は周知の事実だけど、でも一番面白いドラマとしてのネタはやはりやくざであることも事実だとおもう。