ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 コレクターズ・エディション [DVD]
ピーター・ジャクソン
ワーナーマイカル熊谷

3時間を越える映画でまったく完璧な映画です。素晴らしいっス。これくらいの長さでちょうどいいです。前作の性急な感じはまるでなく、心理描写もより深いものになってます。いろんなテーマと演出が一体となってそういう寓話なのかとようやくわかってきました(原作読んでないのバレバレ)。
デジタル技術も一箇所も違和感がない。表現力もさらにアップ。このままだと技術にあわせて全部終ったらまた第一作のフィルムの色調を直すのではないか。
R‐15にでもしないと、中学生が観たら知恵熱出しちゃうね。それくらいの力はあります。体調万全じゃないと負けちゃいます。
二つの塔』の戦闘場面の鮮やかさが、ゲームみたいだなあと感じて、SFXの影響かなとも思っていたのだけども、良く考えたらピーター・ジャクソンって、上と下の位置関係をうまく描ける人だというのを忘れていた。『バッドテイスト』、『ブレインデッド』『さまよえる魂』と2階1階地階のタテの場所の関係を見事にわからせてサスペンスを生み出すのが巧みだった。
映画ではだいたい写真や絵画と違いタテ長のアングルはありえない。そこは演劇と同様の制約。でもキャメラを上下に振ったり、俯瞰や仰角を多用することはあまりしないし、あってもスタイルだったりするのは、キャメラが主張しすぎて感情があまりにも出すぎるのが嫌われるでしょう。アオリのスタイリストも必要以上に考えすぎると変になったりする。
さて『二つの塔』だが、オープニングのあれだってあのタテの空間の使いこなしは見事だよね。普通は『インディジョーンズ魔宮の伝説』のラストの悪役の落下のようになるのだけど、あのカッティングと長回しの使い分けは見事。最後の戦闘も位置関係が完璧に理解できた。『七人の侍』では何度観ても村の位置関係がわからんが。『十三人の刺客』はどうだったかな?第1作の『旅の仲間』のオークの地下の工場(?)もそうだった。もし『さまよえる魂』を観ていたらどんなことを言っていることがわかると思うんだけど。
なにが言いたいかというと、スタイルにこだわるのでもなく何気なく撮れる手腕が大したものだということ。これだけきちんと撮れるのは、ロバート・アルドリッチの位置関係の的確さか、ドン・シーゲルの編集技か、またはロバート・ワイズの大胆さじゃないかな。なぜかロバート・ワイズがね、気になるんですよ。『ウエストサイド・ストーリー』の俯瞰やビルの上と下、『アンドロメダ…』の地下からの脱出。職人監督に分類されちゃっているけど、編集者出身だけにカットのつながりがていねいでいつ観ても楽しめる。そのあたりに注意していなかったので断言できないけど、ジャクソンとワイズをつなぐ線はなにかありそうな気がする。