呪怨 劇場版

呪怨 劇場版 デラックス版 [DVD]
清水崇
ワーナーマイカル熊谷

観た人みんなが言っているように、ビデオ版の方が怖い。なんでだろうか。清水祟監督が今の日本映画のなかでもかなりのテクニックを持ったおもしろい作品を撮る監督だということは異論がない。でも敢えて考えてみるとこうなるんじゃないだろうか。
 1.アップが多い。2.音が先行。3.画がクリア過ぎる。
ビデオ版はビデオなのに、全くその表現できる限界を斟酌せずに映画の如く大胆かつ繊細な作りをしたが、映画版は映画らしく職人的なていねいなやり方を取ろうとして却ってテレビドラマになっちゃったのではないか。会話になるとすぐに切り返してカットを割るために、役者の表情に注意が行き過ぎてどうしても「あー演技してんな」と冷めてしまう。ビデオ版のように全身のロングで怯える突き放した怖さが出てこない。怖いのはその人の〝状態〟じゃなくて人がいる〝状況〟なのです。それを出てきたお化けの状態に重点がいって、お化けが出てくる状況がハッタリが効いていない。不条理じゃなくすべての理由が理解できちゃう。
彼の持ち味のモンタージュの上手さも出し惜しみしているようで、音先行のカット繋ぎがあまりにも感覚的に予想できちゃうんですよね。遠くで音がして…というのが多く、心構えができる。だから反対に俊雄くんがテーブルの下にいるシーンの前後のカットの繋ぎ方と音が無音の単純さが一番怖いのですよ。場内もひええとなっていた。
画にしてももっとのっぺりしててもいいのにねえ。あのメインのお化けも悪いモノ食ってアタッた山海塾にしか見えない。逆にロング一発入れられればOKだったと思うのに。リアルに見えるとちょっと躊躇したのかな。ビデオ版の怖いのはみんなロングだったような気がする。その身も蓋も無い即物的なところが無闇に怖かったのだけど。あと室内の照明がつまらなかった。わざと明かりをつけないので、明かりつければ怖くないじゃんと思っちゃう。
話の時間軸が変だったがなんでかな?今回いままでの演出パターンを崩して作ることに挑戦したみたいです。でもクレバーな人なのできっと『呪怨2』では持ち味の即物的なところとモンタージュのテクニックの整合性が解消されていると思う。個人的には注目していた〝階段を上手く撮る〟が最初のカットから出てきてニヤリとしてしまった。