近未来蟹工船レプリカントジョー

松梨智子
BOX東中野

うーんうーん…。今回そうとう気張ったんだと思うよ。それが空回りしちゃってこういう風になったらおもしろくなくなるのにぃ、ということをすべてやってしまった。自分の強みを捨てちゃった結果がつらいもんがあります。マトモになっただけツマラナイということですね。
前作『サノバビッチサブ』の時に撮影をちゃんとした方が良いんじゃないかとも書いたけど、あくまでそれは付帯条件なので、画面がきちんとした分、ノリが消えてフツウになっちゃうという、よくある技術スタッフに牛耳られるパターンを乗り越えられなかったようです。
自分の作品の強みが、如何に小劇場的なもので構成され、パクリで構成され、画面についての何ら偏愛がなくても、自意識過剰なテンションで一気に突っ走りラストまで失速しないところなのに、それがすべてアラが見えてしまい観客が白けてしまうという展開。まあ自主映画出身によくあるといえばそうなのだけども。さまざまなイメージのパクリが衝突して脳内思考を停止させて化学反応を起こす技が、「ああやっているね」と冷ややかにしか思えないのは、描くのを難しいとこをCGにするとか、テロップでここで笑ってくださいという部分が多すぎで、チープな作品ならそれが笑えるのだけど小細工的に作りこむと単に手抜きしているとしか思えない。そこを描くと言うのが映画ということですよ。自己中心的な人物が鬼畜な振舞いをするのが最大のポイントなのに、役者にテンションの高い演技をさせず、基本的に変だけで悪い奴じゃなくて、青春の挫折を味わい、人から嫌われたらどうしようと考えながらも…。観てる方としてはどうでもいいんですわ。
なんか30人収容くらい小スペースでの芝居を200人キャパの小屋で見せられた感がものすごくあって、作っているほうがそれなりの規模の作品を作りたいのはわかるけど、メジャーを目指してもカタチだけで、映画としての技法の未熟さだけが目についてしまう。74分ですら持たないのはねえ。テンションの高い以前の方法に戻るか、もうちょっと映画の技術を学ぶかですよね、パクリでなく。「バカ映画」を作っていて褒められたからって、それは「素人映画にしては」というレベルでしかない。もしかして少しアタマが良くなったんじゃないかと勘違いして作ったが、基本的に「バカ」の中身は変わっていないので、単なるアタマが悪い映画としか見えないというのはねえ…。松梨本人が出てナンボだと思うのだけど。