花と嵐とギャング

花と嵐とギャング [VHS]
石井輝男
(ビデオ)

さすが石井輝男、びっくりするくらいバタ臭く楽しく新しい娯楽作品。昭和 36(1961)年にこんな映画を作れるなんて素晴らしいです。ゴダールが悩みながらなんとかアメリカギャング映画もどきの『勝手にしやがれ』を作って、世界に衝撃を与えたと評論家は言うが、撮影所の現場に言わせれば「なんだこんなもんか、じゃあこっちもやったろうぜ」と軽いノリでヌーベルバーグのよりも遥かに上手く、テンポも良く、ジャズが流れ手持ちカメラで、追いつ追われつ騙し合いで銃撃戦もある、これでもかというサービス満点の内容。
例えるならどっかの横丁の洋食屋のオヤジが作ったラードがギトギトのオムライスなんだけど、本格フランス料理よりもうまくてボリュームがあって、頼んでないのにサービスでコーヒーが付くようなもの。(違うか?)
高倉健が良いね。石井アクションの主人公はみんな元気があってでもどこか抜けている憎めない奴。鶴田浩二も不思議な日本人離れした存在感がある。女たちもみんな悪だけどすごく積極的に物語を引っ張る適度なエロさ。
どこまでも下世話な風景だったり、みんな日本家屋でもソフト帽を脱がないギャング稼業という設定や何発も打てる拳銃。洋画だけしか観ないようなファンからは嫌われたのだろうなあ、日本人はいつもマジメだから。いまになって時代がやっと追いついたということなのでしょうか。アメリカのB級でもこれくらい生き生きとした展開のアクション作品は少ないと思うのだが。この陽性ギャング路線と網走番外地のふたつをヒットさせているのに、世間的には重たい変態性愛モノばかりがまだ評価されちゃう。うーんまだまだ世の中マジメなのだねえ。