シンク

 97 村松正浩BOX東中野

 1人の女の子と2人の男が、相互にテレパシーで絶えずコミュニケーションを撮りながら日常生活を過ごしている。その有り様をドラマチックさもなく、淡々と描く。ビデオ作品。
 ビデオでダラダラと長回しをして、良い間違えても、言葉に詰まってもNGだか、分からない画面がつながれていく。それは、それなりに快感がある、というのはウソで、たぶんこの作品が最後まで見ていられるのは、二つの理由があって、一つは、センスの良さというか 自主映画の王道の貧乏臭さをクリアしている点だろう。出演者の自然さ、衣装のセンス(オレンジのダッフルコートは決まったね)、小道具などが、まあ90年代しているから、生活感無いから、ファンタジーとしてまた、現在の青春映画として成立している。カメラがグチャグチャ安定しない分、テレビの深夜枠ドラマには無い生々しさはある。もう一つは音の良さで救われている。風によるノイズは無いし、ビデオ特有の些細な呟きまで捉える繊細さが作品を引き立てている。結構、そこに気を使っていると思う。音楽へのこだわりも自然であり好感が持てる。
 編集では、岩井俊二の影響か唐突にインサートが入ってビジュアル・ショックでまあ、ダラダラをごまかしてる部分もあるけどね。
 ビデオの特質なのか、作品の特質なのか分からないけど、悲しいくらい淡泊な3人の関係、他人への不干渉、双方的に見えて、実は一方的なコミュニケーション。カメラは3人の物語の中に入らず、回りをなぞっているだけ、そのシラケ具合が独特さを生んでいた。一つのやり方だとは思うけど、そこに監督の刻印が見えるかというと分からない。同じ方法は2度出来ないだろう。商業路線には乗らないだろうがそれはそれで良いのかな。ちょっと長いので覚悟してみるべし。90年代の一つの側面が見えるかも。
(角田)