出発

 洋画、邦画を問わず、青春映画は、ちょっとせつない。フランスとオランダとドイツ(ポルシェで疾走するわけだし)に挟まれた、ボクにとっては「シメイ(ビール)」の国といった程度の認識しかない、ポーランドからの亡命監督によるベルギー産のこの映画も、やはり例外ではない。
 ポップでシュールな映像美はこの当時のヨーロッパの流行だろうか、「地下鉄のザジ」(ルイ・マル監督・1960年)とイメージが被る。主人公がジャン・ピエール・レオーというのも、ヌーベル・ヴァーグの系譜に入れてしまいたくなる要因か。
 粉々に割れた鏡が「逆回転」で元に戻るところなど、印象的なシーンも多い作品だった。「ポルシェ」から「女」に目覚めるラストシーンは新しい人生への「出発」というよりは「あきらめ」のように思えるが、後味は悪くない。
(船越)