デジタルの真打登場か?

間もなくデヴィッド・フィンチャーの『ゾディアック』が日本公開される。まあ映画のデキ云々はべつに期待はしてないんだけども、テクノロジーの使い手としてのフィンチャーには大いに期待しているので、幾つか関連記事を探した。eiga.comのインタビューを読むと、デジタル環境ですべて製作したようですね。
では、ということで「アメリカン・シネマトグラファー」のサイトに跳ぶ。キャメラは、トムソン・ヴァイパーだ。『マイアミ・バイス』や『コラテラル』もそうだった気がする。ワーク・フロー図も載っている(撮影編集)。それほど目新しいことしている印象はないなあ。もはや「デジタル撮りでデジタル仕上げ」のフォーマットは確立されたということなのでしょうね。しかもMacベースですべてOKなのね。
フィンチャーはもうアナログには戻れないと云うが、撮影監督の発言はどうも歯切れが良くないような気がする。やはり技術者としては納得できない、フィルムと比べてまだ過渡期のシステムなのだろうか。


ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』新三部作をソニーのHDカメラで撮ったけど、その後ソニーパナソニックの日本製機材がハリウッドで大躍進した話は聞かない。
ハリウッドというかアメリカは一筋縄ではいかないからね。かつて日本が国際標準にしようとしたハイヴィジョンの規格を潰したり、外国製のキャメラではなく、自国産35mmキャメラのパナヴィジョン普及を画策したとか、きな臭い噂は色々聞くからねぇ。デジタル・シネマに関しても、米国内で国際的に通用する開発が進むまでは、コダックとかフィルムメーカーとの絡みもあるし、国際基準を決めないのではという憶測もかなり当たっていると思う。
・ちょっと古いがデジタルシネマの概論。


4月の半ば、NAB20007(国際放送機器展示会)が開催され、そこでピーター・ジャクソンの新作『Crossing the Line』が公開された。ご存じない?実は今のHDカメラを越える高解像度を持つ、米国産デジタルキャメラRED ONEを使って作られた12分の短篇映画なのです。色々読む限りではすごいですねえ、コレ。

スペック的には、先述の『ゾディアック』は、4Kという解像度。35mmフィルムと同等という。RED ONEはそれを越えた解像度が実現できるという。しかも値段が安いよ、…170万円。
業務用のヴィデオカメラより遙かに安いぞ。はっきり云って個人購入可能じゃないの。プロダクションレベルの話じゃないよね。ただハードディスクとかアクセサリーを付けるとトータルではどうなのか。(こちらの解説がさすが本職の方だけあって、詳しいです)


Apple社の編集ソフトFinalCutProのページにRED ONEのプロモーション・ムービーありました。超カッコいい!!『ゾディアック』の編集風景もあるぞ!


ピーター・ジャクソンは、RED ONEの2台のプロトタイプを使い、撮影2日間、ニュージーランドVFX工房WETAで編集ポストプロ10日で仕上げた。
ピーター・ジャクソンがこのキャメラを選んで、実際に製作したことで、真打登場って感じではないだろうか。そのウチにきちんと動画がアップされると思うので期待したい。(ここで一部が観られます。一番下にリンク先があります)

こちらでは元の大きさで観られます。
しかしね、さすがピーター・ジャクソンだと思うのは、アカデミー受賞監督であり、巨大国際映像メーカやカネのしがらみの多い映画界にいながらも、無名メーカーのキャメラを選択し、自分で撮影して、仕上げるなんて粋じゃないの。そのこと自体が今の映画界に対する強烈なメッセージだと思うよ。やっぱりココロに『バッド・テイスト』の自主映画精神を持っているね!