黒山三滝〜顔振峠〜越上山

埼玉県越生町
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一気に春めいてきた淡い新緑の山を楽しみたいので、クルマで一番近くの、といっても1時間の走ったところにある越生の低山に向かう。池袋から1時間くらいの場所にある、ちょっとした観光スポットの黒山三滝から登って、顔振峠を経由して越上山(567m)へ行く周遊ハイキングコースを走破を目論む。


まだ4月だというのに昼前の気温は高く、Tシャツ一枚でクルマの窓を全開にして走らせる。越生梅林を過ぎ、石段の巨木が立派な熊野神社の脇の、5,6台は停められそうな町営駐車場にクルマを入れる。ここから黒山三滝の入口まではすぐだ。map:x139.2553y35.9396
ここには鉱泉宿があり日帰り入浴もできる。いまは天然温泉が都内でもたくさんあるけど、以前はここが東京から一番近い温泉(鉱泉)宿だったと思う。
ほど良い暖かさの中、ゆったりと歩いていると、渓流のせせらぎとウグイスの鳴き声が薫風に乗って近くの山々に響き渡るのが耳に心地よい。陽当りの良いところでは白いシャガの花と、ヤマブキの黄色の花が咲き乱れている。ここはスギ、ヒノキ林の植林なのでそれほど緑は感じられないが、日陰に入るとひんやりとしたスギやヒノキの良い香りがする。おお森林浴じゃ。
天狗滝と書かれた道標に従い、滑りやすい岩場を手すりを頼りにして進む。すぐに水量が豊富な滝が現れる。10mくらいの高さだろうか。少し立ち止まってから、脇の階段を上りまたもとの道に戻る。目にした看板には畑を荒らすイノシシ、アライグマ、シカ、ハクビシンの駆除をしていると書かれていた。
土産物店のアーケードを抜けると、その先に男滝、女滝の二つの落差のある滝が見える。さっきの天狗滝と合わせて、黒山三滝と云うらしい。なんか北向きで一年中陽が差さず暗いので、地味な印象がある。
普通のサンダル履きの観光客が来るのはここまでで、道は滝から離れてさらに登って行く。しかし東屋を過ぎるとすぐに平坦な道になる。ここはハイキングコースとして整備されている。傘杉峠との分岐を役の行者像へのルートを取る。
登山道の左右から、草の芽がたくさん出て来ている。今から梅雨までのこの時期は、冬の間枯れていた地面から、一斉に芽吹き成長するので、毎週のように同じ場所を歩いても変化があって面白い。時折ウグイスがすぐ近くの薮で、突然大きな声で鳴いたりするのでびっくりする。

冬場の山歩きと違い、久しぶりに汗がたっぷり出る。こうやってまた夏向きの身体になっていく季節が来たなと実感する。低山は4月5月が一番いいですね。
落葉樹の新しい薄い緑の葉が、太陽光を透かして映えて美しい。なんかホッとする。次回は自然林だけの森へ行こう。山に入ると緑の光の中を歩いている不思議な感覚になる。
やがて広い窪地に出ると、奥まったところに巨木があり、そこに役の行者の像がある。残念なことにいまは像の頭部が壊されている。いたずらだろうか、わざわざここまで来てそんなことをなぜするのかなあ。夢枕獏なら、このネタで長編でも書きそうだね。
像の裏手に回る道を行くと、林が終わり南斜面が切り開かれて近隣の山々が一望できる。まだ山桜が咲いているところもある。ヤマツツジの花はまだもう少しだった。このあたりに来ると林道を走るバイクの音も聞こえてくる。
再び暗い林に入り、平坦な道を行く。やがて巻きながら登って行くと、片側が切り落ちている箇所に出る。でも手すりが完備されていて危ないところは無い。傘杉峠からの道と合流すると、すぐに舗装道路に出る。奥武蔵グリーンラインという、この山の峰を飯能から秩父まで走っている快適なドライブ道路だ。テクテクと歩いて行くとすぐに顔振峠に到着。ここから奥多摩の山がよく見える。数件の茶店があり、食事ができる。
ここからさっきの黒山三滝に戻る道があるが実用本位の道で面白くない。また南の西武秩父線吾野駅に下る道もある。今回は舗装道をさらに進むことにする。
道路が右に大きくカーブして下るあたりに左側に入る登山道がある。広めの道でアップダウンもないので快適に行ける。昔からの往来道だったのだろう。ぽつんと置かれた古い道標には「一丁目」「二丁目」と書かれていた。
やがて立派な神社の裏側に出る。諏訪神社だ。思っていたよりも立派。例祭などもするようだし、広い駐車場も完備されていた。孫を連れた地元のおばあさんとちょっと立ち話をする。役の行者像の話になり、あそこには毎月お参りに来ている人たちもいるそうだ。
公共のトイレがある駐車場の奥に道は続いている。少しずつ傾き出した陽が作り出す、木々の影の間をゆっくりと歩く。15分ほどで越上山の分岐点に着く。ゴツゴツとした岩肌を一気に登る。頂上からは少し木が邪魔だが、飯能あたりから東京西部までよく見える。山頂は横に長く一番奥まったところに「越上山」の看板がある。map:x139.2545y35.9251
分岐点まで戻り、しばらく行くと一本杉峠で林道にぶつかる。今日はここから林道を下る(いま地図を見たら、自動車道でない旧一本杉峠を歩く登山道もあったようだ、残念)。このあたりの道も冬場、雪が多いと通行止めになる。今年はまったく大丈夫だったようだ。30分ほど歩いて黒山温泉へと戻る。

(4分42秒)

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