天国か地獄か
先日、手持ちの本をドサッと売り払ったのですが、整理していて久しぶりに棚の奥から出てきた本がありました。なつかしい。たぶん買ったのが20年以上も前です?!
天国か地獄か (ハヤカワ・ミステリ 1210 世界ミステリシリーズ なまけスパイ・シリ)
- 作者: ジョイス・ポーター,沢川進
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1973/11/01
- メディア: 新書
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
ドーヴァー警部を知っている方はお分かりだと思いますが、英国人特有のドギツイ黒い笑いが満載なんですよねえ。「切断」とか(ケッサクです)。
たぶん画にするとやりきれないんでしょうが、文字だとあっさりとしていてあとで、あれっと読み返すと相当なことが書いてあったりして仰天する。
そんなジョイス・ポーター女史が併行して書いていたのが、<なまけものスパイシリーズ>。これは何冊か書かれているが、全部は翻訳されていないはず。
やーなにがすごいって、設定がね。まあ主人公のエディはイギリス諜報部員ですわ。それで上司がものすごく陰険でイヤな奴だったりする。エディはアメリカでの休暇のはずが騙されてソビエトに飛ばされるのですね。そこでの任務が集団農場の地下組織を助けることだと知らされる。
ソビエト共産党に反対するやつらなんだけど、自由の戦士とかじゃなくてどうしようもないサイテーの奴らだったりする。資金集めの手段にポルノを地下出版している。そのなかでも特に鼻つまみ者の女がいて、そいつが夫を殺して逮捕され刑務所にいるのだが、もし死刑判決が出たら、みんなバラして組織を道連れにすると云っている。そこでエディが彼女を死刑から逃れさせることを命じられる。
ここまで読むと007のパロディにしか思えないけど、この先の救出作戦がグロテスクなアイディア満載で抱腹絶倒、次々に強烈な艶笑ブラックユーモアが炸裂します。正義感の欠片もない自分勝手な奴らを、西側国家を代表して救う倒錯さ加減。
イブリン・ウォーも裸足で逃げ出し、80年代のツツイか、山田風太郎の忍法帖か、いやどちらかというと宇能鴻一郎せんせいの世界だよ。
この先はバラしたいけど…書かない!ぜひご一読を。損はさせません。