妙義山

(群馬県妙義町)
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(5分30秒)

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6時30分出発。しばらくして朝日が昇ると一気に明るくなる。快晴でわくわくする。
8時頃富岡の町に近づくと、まわりは晴れているのに、市内から白い煙が立ち昇りすべてが霞んでしまっている。なんだ?と思いながら市街地に入ると、パラパラっと粉雪が舞い、風に乗ってたちまち道路が真っ白に埋め尽くされる。局地的な降雪が煙の柱のようにみえたのか。これが風花なのかな。
8時30分、「道の駅みょうぎ」に端っこにクルマを停める。(本当はここの下徒歩5分のところに登山者用の駐車場がある)
…案の定だれもいない。物産店も冬季は閉まっている。寒い、芯から冷える。息が白く体感気温は0℃に近い。目の前の岩山が迫ってくるのが見事。先ほどの雪雲がこちらに移動して正面の山にぶつかるとあたりはホワイトアウト状態になるのが見える。山の中であれが突然起きたら怖いなあ。だから冬山は怖いよね。
まずは鳥居をくぐり、土産物屋のあいだを抜けて進む。妙義神社の石段の手前の狭い車道を左折。左手に道の駅を見下ろす。この道で良いのだろうかと民家の間を抜けるとまた二車線の道路にぶつかる。ここは昔は有料道路だったらしい。風が強く、時折突風に積もった粉雪が吹き飛ばされる。しかしまだ凍結するほどは降っていないようだ。
ダラダラとした舗装道路歩きに飽きた頃、きんけい橋の右手に登山道が見える。前方に立ち塞がる金鶏山を迂回する道路をショートカットするかたちで登山道が作られている。お馴染みの「熊注意」の看板を横目に、自然石で作られた階段を登っていく。落ち葉が雪で覆われ風情がある。靴で雪を吹き飛ばすとすぐに地面が見える。まだまだ根雪にはなっていないようだ。
遠くで時折猟銃の音がする。気温が上がらず寒いので東屋でレインウェアを、Tシャツ、厚手の長袖シャツ、ユニクロフリースの上に着込む。派手な黄色なのでこれなら撃たれないだろう。
雪の上には小動物の足跡が点々とある、キツネか?ウサギか?見上げるとまわりをぐるりと奇岩に覆われている。圧迫感のある不思議なパースペクティブだ。
緩やかに高度を上げていくとまもなく大きな燈籠がある「一本杉」に出て、再び道路に合流。また道路をテクテク行く。
身体が暖まりだした頃ようやく石門入口に到着する。まずは「かにのこてしらべ」という鎖を使うほどでもない石をよじ登る。と、すぐに第一石門が見える。あまりの巨大さに驚く。その下を潜り抜けて、さらに第二石門に向かう。足跡がないのでここ数日だれも歩いてないようだ。時期外れだしね。
一枚の岩を横切るように付けられた水平の道「かにの横ばい」。足場のくぼみと鎖はあるが、高度があるので落ちたらタダじゃすまない。心持ち、風の音が大きくなったような気がする。意を決して30mくらいの距離を慎重に進む。腕に力が入る。これが終わると今度は「かにのたてばい」。鎖に頼らりながらよじ登り進まなければならない。腕力に自信が無いので冷や冷やものだ。ようやく登りきって石門の真下に来る。
でその先を見ると、下りなのだが…鎖で、北斜面で、足場がよく見えず、雪が積もっている。……うーん、もう腕力の限界だよ。突き進んでも良いけど、一番怖いのは途中で力尽きて進むことも戻ることもできなくなった場合だ。無理することはないと自分に言い聞かせて戻る。…すでに腕の筋肉がプルプルいっているぞ。慎重過ぎるほどゆっくりと来たコースを「かにの退却」する。
改めて迂回路を進むと、石段がうまいこと配置されていて、中国の山水画じゃないけど、奇岩の庭を歩いている雰囲気になる。途中で分岐する第三石門への道は通行止めのようだ。登りきると平場になってテーブルが置かれ第四石門が現われる。東屋があるのでここで昼食。天気は良いが、風が抜けて寒くてどうしようもない。コーヒーを飲まずに早々に出発する。前方の上方にオモシロイ形の「大砲岩」が見える。けっこう大きい。
登山道は「関東ふれあいの道」のコースなので整備が行き届いていて、春頃なら格好のハイキングコースだろう。日陰では岩を伝った水が凍り、つららがあちらこちらで見られる。水がずっと風で飛んだためか一本の木が全部氷で覆われている。樹氷?霧氷?とも違うよね、なんていうのだろうか。でも見事なものですねえ。ここで足場が凍っていると分かっていながら、二度も連続して転びました。完全に身体が宙を舞っていたぞ。アタマを打たなくて良かったっす。つるつるの氷の塊の上を歩けって云うのが無理だ。
岩にへばりつくような道を上がったり下りたりする。やがてヤセ尾根に鉄製の細い階段が設置されているのをどこまでも下る。下が透けているので景色は良いというか怖い。延々とどこまでも下る。階段が終わるとさらに九十九折の道をどんどん下る。道を間違ったか下に出ちゃうかなと思ったけど大丈夫でした。
本読みの僧というメガネをかけたお地蔵さんでちょうど半分という。それにしては時間がかかったような気がする。さらに上の峰に登る上級者コースとの分岐を過ぎ、第二見晴に着く。景色はそれほどでもないなあ。
この先からは平坦な道が多くなるのでサクサクと進む。それでも一度落ち葉で隠された窪みを踏み抜いて滑って滑落しそうになった。もし落ちたら木も生えてない谷間なので登って来れそうもなかったので肝を冷やす。沢もいくつかあり、この間の大雨のためかこの時期でも豊富に水が流れていた。
大黒の滝という小さな滝を過ぎ、さっきと景色の変わらない第一見晴を過ぎると、いつの間にか夕陽になっている。
突然、杉の巨木が何本も現われると、あたりの空気が変わった気がする。明らかに聖域に入った感じだ。ここからが妙義神社の敷地なのだろう。岩山の険しさを考えると修験道の山なのだろうね。50分で行けるという奥ノ院との分岐を過ぎる。今回は見送る(30mの鎖アリ)。
ようやく屋根に薄く雪が積もった妙義神社が見えてくる。境内は静寂で凛として気持ちがいい。本殿の裏に回ると、天狗社という小さな社がある。近づくと天狗の面が祀ってあった。
本殿に至る石段はふたつあり、一つはまっすぐ境内まで繋がっているのだが、もうひとつは配置がまっすぐでなく変に角度が付けられて奥まで見えないようになっているので、庭園のように懐が深く感じる。
ようやく神社の鳥居をくぐり、道の駅に戻る。今日はたっぷりと歩きました。