負けるのは美しく

負けるのは美しく

負けるのは美しく

俳優、児玉清のエッセイ。どういう経歴の人かというと――学習院大学でドイツ語を学んでいるときに、のちの篠沢教授(当時の同学年生)の制作するフランス語劇の主役に抜擢されその役者人生をはじめる。卒業後に東宝ニューフェイスとして入社。大部屋に配属されエキストラからはじまり、そして主役に抜擢されるまで様々な作品に出る。その後は東宝との契約を解除して、テレビに活動の場を移す。
一歩引いた目線を持っているし、目立ちたがり屋でなくても長身(昭和30年代で180cm以上!)のために目立ってしまい、目を付けられえるが鼻っ柱が強い部分あって反抗する。青臭いのかもしれないが、邦画の黄金期だったこともあり許される存在だったのかな。
でもやはり映画は水に合わなかったのは舞台経験があったためか。カットごとにカメラを止めないテレビ方式が結果良かったのだろう。みんなの知っている児玉清像はTBSの東芝日曜劇場なのだろうね。
本書で面白いのは、確かな観察眼から見た監督たちの肖像だ。なかでも古沢憲吾の現場の様子には笑った。
ワンシーンを撮り終わると、次の場所に監督が真っ先に走り出し、その後をキャメラ、スタッフ、キャストが追いかける。監督にみんなが追いつくと、すぐに「ヨーイ、スタート!」と叫ぶが、「監督、まだキャメラを来ていません」と助監督に云われる部分など、まさにまさにクレージー映画そのものだ。そのあっけらかんとしたところが古沢演出の魅力だったのかもしれない。植木等が画面の奥から走ってくるのをクレーンが下りてきて捉える楽しい歌のシーン数々を思い出すね。(青島幸男の小説でも古沢憲吾をモデルとしたやたら元気の良い監督がちらりと出てくるのがあったぞ。)
稲垣浩黒澤明今井正の現場の様子も書かれているので、それだけでも貴重な証言でわくわくしました。
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