暁に散る

夏山最後のシーズンなんで、ばーんと派手に行きたいネエ。とN氏とメールを交わし、そういえばあれ富士山という日本最高峰のヤマがあるじゃないですか、最近は外国人の観光名所としても有名で、山頂では各国語が飛び交うらしいですよ。老若男女、サンダルに短パンで登るような猛者もいたりするし、片道5時間も歩けば到着すると云うじゃないですか。ぜひご来光を味わいたいもんですな。この夏を締めくくるのにはこれで決まりだね。
とノー天気な考えから、クルマに荷物を積んでNと夕方に出発しました。が土曜日の天気、富士山に近づくにつれてどんどん激しくなる雨。山道はガスッて来て視界が悪くしかも滑りやすい。大月から山中湖経由で裾野。そこから登山口へ続くふじあざみラインに入ろうとすると、「満車」のタテ看板が…。え、いま夜の11時なんですけど。駐車場は200台以上は停められると書いてあったんだけどな。この時期一番マイナーなルートとされるこの場所でまさか、と思いつつ真っ暗な中、急な舗装された道を登っていくと、何台も対向車が降りて来る。頭の中が?だらけになると路上駐車のクルマの列が延々と道路に並ぶ。行き止まりの駐車場にはガードマンがいて奥の駐車場を示す。すでに満杯である。全国各地のナンバープレートが並ぶのは壮観な眺め。真っ暗なので崖から落ちないかとひやひやしながら見つけた端っこのスペースに駐車。
ライトを消すと当然ながら真っ暗。それでもクルマや人の出入りは多い。ヘッドライトを付けて登山準備。ときどき蛾が寄ってくる。エンジンを切って静かになると雨音がしとしと空気はひんやり。たぶん10度前後だろう。12時30分、レインウェアを着込みいざ富士山頂へ。
須走口新五合目の登山口は標高2000m。頂上まで高低差は1776mだ。まず登山口がわからずとりあえず人のいる方へと進む。それにしても人がたくさんいる。若者たちから会社の仲間のようなグループまで様々だ。ホント観光地みたいだが、こういう日はむしろ頼もしい。
地面は溶岩が砕けた礫まじりの細かい砂、じゃりじゃり音を立てながら進む。とりあえずペースが遅いワタシが先行。Nが後から着くカタチ。道にはうるさいくらいの道標があるので、夜間でも登山道から外れる心配はない。
このあたりまだ樹林帯で頭上が木に覆われているので吹きっさらしにならないので風雨は大丈夫。ヘッドライトで見える範囲は狭く、しかも霧が反射して光が拡散する。レインウェアには時折ぼたっと木々から垂れる雫が。逆に風がないのがいいのかどうか、服の中が蒸す。でも外気は涼しい。
どうもさっきから歩くペースが掴めない。ゆっくりと行かないとあとでバテると書いてあったのでゆっくり歩いているつもりでも、ついつい速度が上がってしまう。先が全然見えないからかもしれない。
歩きはじめて30分もしないうちにバテる。どんどん追い抜かれるのは仕方ないにしても、なんか調子がおかしい。いくら休んでも体調が戻らない。息は整い心拍数も戻るのだが、足が上がらない。歩幅を狭くして少しずつ進むが、それでもまったく距離が稼げない。急坂かと云われるとまったくそんなことはないんだけど…。何度目かの休憩で完全に足が止まる。どーもアカン。ホントどーしようもないよお、と泣き言を云う。もうダメだから戻ろうとさえ口走ってしまう。それくらいシンドイ。
「高山病じゃないかなあ」とNが呟く。まさかこの高さで?試しに持参したアミノバイタルを一口二口飲んでみる。一瞬間で脳みそがハッキリし出すのを感じる。なんだか身体が動くぞ。ふたたびゆっくりながら歩き出せた。ホント不思議だ。*1
樹林帯が少しの間切れる。遠くまで薄いながら一面の霧が拡がっている。その遙か上方に登山者のライトがあちらこちらに光を投じ空中に吸い込まれているのが幻想的だ。
2時30分、発動機の音がすると新六合目(2400m)の山荘だ。休憩になると元気が出てそこら辺を見て回る。レインウェアをフリースに替え、ベースボールキャップ脱いでをタオルを被る。
出発後も同じような砂地と樹林帯が続く。抜いていく人たちは我々よりも軽装なのがほとんどだ。3時30分、本六合目(2700m)山荘の前のベンチにへたり込む。ここまでの記憶があまりない。時折強くなった雨に打たれるが、もう動けない気分。身体が冷えていくのは分かるけど、これ以上は進めない。明るくなれば少しは楽になるのかなあと思いながら座っている。夜明けまであと90分。山荘では目覚めた人たちが朝の準備をしている。ここれで山荘で休んで5000円獲られてもなあ。
気分が悪いとか疲れきったとかじゃないんだよね。目の前にどんと壁が現われた感じ。行くか行かないかしかなんだけど、乗り越えられるのか半信半疑で、もしかしたらという淡い期待もある。判断停止状態かもしれない。
でも徐々に明るくなって来たので見えるからどうにかなるかもと出発する。ここからは岩が出てきて滑りやすくなる。さらにペースが下がる。歩き出して10分ほどでNからストップがかかる。ああショックだけど半面ホッとする。

で、明るくなって来た中を下るんですが、これ以上は書くことがないので止めます。写真?…余裕と同じく無いです。自分の体力に合わせて2日くらいたっぷりかけるのが正解なのでしょうね。やっぱ山登りじゃなく、山歩きがいいのかなあ。
体調不良の原因がよくわからないデス。
でも来年はリベンジするからなあ!(←だれに言っているんだ?)
富士山、ちょっと病みつきになりそうです。

<参考>あっぱれ!富士登山

*1:しかし先日の北八ヶ岳のほうが標高があるんだよねえ…