新ネットワーク思考

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

きわめて明晰な本、高校生の夏休みの課題図書にしたいくらいですね。わたしは小学生の算数で挫折したヒトなのですが、数学には非常に憧れはもっています。やー、こういう本に出会っていればね、方程式も確率も代数も食わず嫌いにならなかったんじゃないでしょうかね。数学って何の役になるってよくホザいてましたが、役に立ちますね。
とは云いならがも図らずも、統計をちょっと勉強させられたので、社会学的なアプローチには少しは馴染みがあります。そのあたりがアタマの片隅にあるとよりわかりやすいかもしれません(マーケティングに興味があるでも良いでしょうね)。
本書では、ネットワークについて数学者はどのように考え、それが発展してきたのかを具体的に事例をあげて、難しい数学の言葉を使わずに語りかけていきます。もちろん数式は出てきません!
そして地球上のありとあらゆる、複雑に繋がっている物事が、あるネットワークの仕組みで成立していることが明らかにされていきます。
ここでは、お互いに平等に繋がっているネットワークを“ランダム・ネットワーク”といい、そうでなく極端に大多数のリンクを持つ点(「ハブ」という)がいくつもあるネットワークを“スケールフリー・ネットワーク”という。ちなみに著者は後者のネットワークを見つけた。このふたつは、都市間を結ぶ、道路網と航空網のちがいと考えればわかりやすい。もし両者の都市の数が同じ場合でもちがいは明白だ。道路はどの都市からも一定の数だけ他の都市へ伸びてい地図の空白を埋める。しかし航空網では、大都市空港に路線は集中するが(これをハブ空港という)、地方空港は数が極端に少ない。地図には密と粗ができる。この2種類のネットワークがある。インターネットをはじめ多くのネットワークは後者になる。変化し成長を続けるネットワークは、必然として巨大なハブをもつ仕組みになる。そうならないとネットワークは安定しないからだ。
話はさらに量子力学まで及ぶ。そこまで行くとお手上げだけど。でもまだすべてが解明したわけではない。ただネットワークの応用は広く、次にネットワークについて大きな発見があるとしたら、それは生物学からだろうと云われているらしい。このようにネットワークについての研究がここ十年で進んだのは、インターネットやコンピュータの進歩もあるが、その裏には複雑系の考え方があるという。そうなのか、複雑系の本も読んでみよう。