複雑な世界、単純な法則

複雑な世界、単純な法則  ネットワーク科学の最前線

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線

ネットワーク科学が、現在の世の中の仕組みを握るスモールワールドの謎を解き明かしてから、まだ10年くらいしか経っていないというのが本書を読んでの一番の驚き。ロンドンにある科学雑誌ネイチャーにダンカン・ワッツとスティーヴン・ストロガッツが「『スモールワールド・ネットワーク』における集団力学」という論考を送ったのが1998年だった。
本書では、彼らの考えるネットワークを「平等主義的ネットワーク」と呼んでいる。「インターネット」の分散して世界中に繋がっているネットワークを想起すれば、すぐにわかると思う。理想的に美しいネット民主主義的な考えだ。誰もが平等にアクセスし合い繋がっている世界。
しかし現実を見るとそうではない。もし「平等主義的ネットワーク」で世界が完結しているのなら、その繋がりは標準的な偏差値を持つはずだ。だれもが同数の友だちを持っているという仮定の方がわかりやすいか。でも実際には友だちの数は人によって異なる。ネットワークに影響するのは、少数の膨大な友人を持つ人ということになる。
インターネットで言えば数少ないポータルサイトが莫大な数のリンクを有していること、空港でいえば、数少ない大都市の空港が、たくさんの田舎空港よりも数倍の離発着数を誇っていることだ。これがいわゆる80:20の法則というやつだ。大多数の富は数少ない金持ちに集まり、より金持ちになっていくと云うのも同じ。
これらに則ったネットワークの考えを「貴族主義的ネットワーク」と呼ぶ。アルバートとバラバシが発表した、この法則の方が現実的な気もするが、著者は「平等主義的ネットワーク」と「貴族主義的ネットワーク」のふたつとも存在するという。
またネットワーク社会がどのように機能しているのか、実例を挙げて読み取っていく。「インターネット」「脳」「河川の流れ」「生態系」「エイズ」「経済の法則」などである。
いままではぼんやりと経験則で片付けられて複雑怪奇とされていたネットワークが法則性を持ったものであり、それが生き物のように変化・成長していくというのは面白い。
<参考>
http://marketing.mitsue.co.jp/archives/000111.html