検証 チャレンジャー爆発事故

「勝てない戦争なのに勝っているふり」の大本営発表式の集団ヒステリー、大政翼賛ジャーナリズム先導型、球蹴り中継はつまらないのでこちらを見てました。

実はNHKの「BS世界のドキュメンタリー」の秘かなファンなんです私(ホームページをどうにかして欲しいんですがネ)。
やー便利な世の中ですね。以前はこういう番組がどこから来たのかまったくわからなかったのですが、ネットのおかげで誰が作って(英国のPioneerProductionsという制作会社)、どこで放送して(英国の民放局、Channel4。でもナショナルジオグラフィックとか共同製作で入っているみたい)、どんなスタッフかも(imdbに登録されている!)全部調べられるんだから。
番組は、スペースシャトル・チャレンジャーの爆破事故を巡る物語で、事故の起こることを予見していた、部品メーカーのエンジニア、初の民間人から選ばれた現役教師、事故調査委員会に参加したノーベル物理学者ファインマン教授の三人を中心に再現ドラマを交えて構成される。ドラマチックな表現はほとんどされずに、淡々と事実を畳み掛けていく緻密な構成だった。この手法は日本じゃなかなかできないんだよねえ。日本だとどうしても、泣きが入るセンチメンタル・ジャーナリズムに逃げ込むからね。
番組で、なにが恐ろしかったいうとね、当時スペースシャトルには「第一解決優先課題」とされる問題点が700以上もあって、それらのひとつに少しでも不具合があると、シャトルは深刻なダメージを受けるというのだから、いわば飛んでいる方が不思議という代物だ。
事故は、打ち上げ時の気温が氷点下近くになると、補助ロケットを組み立てるときにガスが出ないように密閉する接合部分のゴムが伸縮しなくなるために、ガス漏れ、引火、爆発したというのが真相だった。
しかしこれが現場エンジニアから報告されたのに、NASAと政治的圧力を受けた製造会社は口を噤んで打ち上げを強行して悲惨な結果を迎えたということだ。
事故調査委員会の調べでこれらが徐々に明らかになっていく。一方で、一般公募の教師は、NASAのだれでも宇宙に行ける時代という政治的キャンペーンの犠牲になったといえる。
番組のおわりで、NASAの担当者は誰も処分されず、告発したエンジニアは退職せざるを得なかったことが知らされる。宇宙へのロマンという美名に隠された、アメリカの宇宙戦略という軍産複合体に翻弄された人々の姿が明らかにされていく結末は虚しい。そのなかで真実を明らかにするの自然科学の法則を無視すべきではないと、政治や軍事を暗に批判したファインマンの姿勢はカッコいいね。今度かれの本を読んでみよう。

でもアメリカのいわばアバウト社会、見切り発車社会の強さは、いまのネット社会を見ればわかるのだけど、日本人には絶対に太刀打ちできない感性なんだろうね。不確定でも不安定でも先に進んだものの勝ちだという開拓者精神は真似しても出来るものではないと思う。価値観の合意形成の問題でもあるよね。