森崎東 レトロスペクティブ

Date: 2004-10-18 (Mon)
http://homepage3.nifty.com/showcine/koya/imageforum.htm#morisaki

11月1日から12日まで。
全監督作品とテレビ作品もいくつか(こっちを観たいな)。もしいままで一本も森崎東を観ていなくて、この時期に時間があれば、ぜひ回数券を買って通ってください。
松竹映画は小津とか松竹ヌーベルバーグとかはよくわかんないけど誰かがホメたから観るけど、山田洋次や喜劇路線とかは泥臭くてヤだなとか思っている人には是非に行って欲しい。弾けるようなエネルギーとテンションの高さと物語と語り口の面白さに悶絶して絶対に中毒になるって。続けて通うと、館内が暗くなって松竹マークの次にシネスコ画面に黄色の殴り書き文字のタイトルがバーンと出て、そこに山本直純の音楽が大音響でかかるだけでワクワクしてしまうようになるのだ。
20年ほど前に文芸座で特集をやっているときにかなり観たんだけど、ただ新宿芸能社シリーズだけは、東京に降った記録的な大雪のために行けなかった悔しい記憶がある。
とにかく観ると元気が出ます。笑いあり、歌あり、涙あり、格闘ありで、ああ映画って楽しいな面白いなと足どり軽く映画館を後にできるのです。
ご参考までにわたしの観ている分だけお薦めの解説を書いてみます。

■喜劇 女は度胸
下町の貧乏な家庭、ダメな父親と働き者の母親、威勢の良い兄と気弱で勉強のできる弟。そんな堅物の弟が恋をした。相手は深窓の令嬢。やがて二人をめぐってみんながてんやわんやの大騒ぎになる…。こんな山田洋次の原案を森崎東が監督すると、全員が最初から最後までくんずほぐれつのケンカに明け暮れ、隙あらば相手をこのバカ野郎、オタンコナスと罵りぶつかり合う、いささかの斟酌も無いガチンコの修羅場となる。そんな馬鹿げた様子を大笑いしつつも、登場人物の大らかでセコくて生きている姿にこちらもいつの間にか感情移入している。これが森崎東の映画の真骨頂です。
男はつらいよ フーテンの寅  
山田洋次と演出力の差が歴然とわかる作品。だけど山田洋次が路線を修正したからこそこのシリーズは残ることができたんだけどね。それほどチンピラでアナーキーな寅さんになっていている、びっくりするよ。
■喜劇 男は愛敬  
倍賞美津子がパンパンにはちきれそうな顔をして元気が溢れ「若い!」としかいいようがない鑑別所帰りの不良少女。寺尾聡の情け無い弟とアクの強い渥美清の兄のドタバタが最高に笑える。
■高校さすらい派
森田健作を主役に据えたマンガ原作だったかな。学園不良反抗路線ものなのだが、ちょっと空振り。1970年、そういう時代のもの。
■喜劇 女は男のふるさとヨ
未見。森繁久弥が社長の新宿芸能社と住み込みのお座敷ストリッパーたちを中心にしたドタバタ事件が起こる。
■喜劇 女生きてます
未見。
■生まれかわった為五郎
ハナ肇主役の北茨城のコンビナートを舞台にした土方とヤクザが戦う糞尿譚。ただただアナーキーな破壊力に驚け。
■喜劇 女売出します
未見。
■女生きてます 盛り場渡り鳥  
未見。
藍より青く  
NHK朝ドラの映画化。テレビドラマよりは面白い。
■野良犬  
黒沢明の同名作のリメイク。ここでは犯人像により焦点を当てて、ハードな社会派ドラマに仕上げている。
■街の灯
マチャアキ主演、栗田ひろみ笠智衆といった不思議なメンバーが集まり、東京上野から筑豊炭田へと彷徨っていくうちに彼らの人生が浮き上がってくる喜劇ドラマ。不覚にもラストに泣いた。
■喜劇 特出しヒモ天国  
未見。これ久々にやるんじゃないのかな。関本郁夫がやるはずの映画だったらしい。山城新伍主演。松竹から出て東映で撮った唯一の作品。
■黒木太郎の愛と冒険  
ATG作品。低予算モノクロ。田中邦衛が主役。森崎の観念性と反天皇制が突出している作品。今の時代のほうが受けるかもしれない。
時代屋の女房
村松友視直木賞小説の映画化。夏目雅子主演というところに今となっては価値があるような。不思議ちゃん話なのでバブル初期の生活感のない時代だっただけにノリが悪い。
■ロケーション
傑作です。ただし記録的な不入りだったので2週間で打ち切り。
ピンク映画の撮影をしていくうちに現実とフィクションが交錯する過程がスリリング。竹中直人の助監督の熱演が素晴らしい。このときの縁で竹中と彼の父(元共産党)についてのテレビドキュメンタリーを撮った(今回はやらないが)。柄本明西田敏行ら80年代の役者たちの演技合戦も妙。美保純、イブちゃん出演(脱ぎあり)。
■生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言  
名古屋の独立プロで撮った作品。原発ジプシーを扱ったためか、完成してもなかなか配給するところが見つからなかった。話の面白さ演出、演技の素晴らしさは絶品ですね。森崎映画の集大成。最新作の『ニワトリはハダシだ』はこの続編という位置づけ。「アイちゃんですよ。ごはん食べたぁ?」
塀の中の懲りない面々
手堅く楽しいのだけど、ちょっともう古いカンジがある。権力側対囚人の対立構図が冷戦以前だ。男映画なので女性を描かせるとうまい監督としては外れた題材だったか?
■女咲かせます
松坂慶子が美しく撮れている女スリ映画。これは結城昌治原作、野村芳太郎監督の「白昼堂々」のリメイク。森崎節が味わえます。原作の裏にどういうテーマがあるかわかっている人には森崎映画として納得できます。
■夢見通りの人々  
小倉寛久が主役という段階で…(以下省略)
釣りバカ日誌スペシャ
この作品あたりから森崎が森粼になったような気がする。うーんこれはね…(以下省略)
美味しんぼ
未見です。
■ラブ・レター
浅田次郎の泣かせ小説が原作。中井貴一山本太郎のチンピラがなんともいい。 これも結構トリッキーな話で、短編小説なら持つのだけども、それを演出の力でねじ伏せて成立させるなんて並みの監督ではできません。