平標山(たいらっぴょうさん)

ryotsunoda2005-07-19

新潟県湯沢町

 日曜日の夜半、コソコソとタオルケット持参で出掛ける。国道17号線をひたすら北上。途中くっきりと見えた上弦の月に明日の晴れを確信しながら、真っ暗な三国峠を越えると気温は22度、クーラーを切り窓を全開にする。約3時間で苗場プリンスホテルの向かいあたりの町営無料駐車場に11時30分到着。もう10台近く駐車している。
 4時30分起床。静かに準備しながら、クリームコッペパンとバナナの朝食。
 5時出発。駐車場にはテントを張って食事をしているグループもいる。無料トイレ脇の小道を抜け、舗装道路を横切り登山道に入る。
 陽は昇っていて明るいが、まだここまでは差してこない。でも高原のためか空気が澄んで涼しい。湿気による蒸し暑さが微塵もない。展望のない自然林の中、いきなり整備された階段が出てくる。オーバーペースにならないように気をつける。適度に湿って葉に水滴のついた木々の緑が鮮やか。もう新緑ではなく濃い色になってきている。大きめの石も適当に置かれていて出水で道が崩れ流されないように足場となっている。ゆっくりと進むがそれでもキツイ。途中で水筒を落とし、追いかけて数メートル逆戻りをする。急に上りから下りに向きを変えると筋肉がついて行かない。膝が寸時笑う。案の定このあとペース配分がガタガタになる。
 やがて林を抜け展望が得られるようになると、緑に覆い尽くされた付近の山々が現れる。雄大な景色にしばし圧倒される。6時に東京電力送電鉄塔下に着く。吹き抜ける風は爽やかと言うより寒い。1時間で300メートル登るのはキツイ。
 さらに急登の林を抜けると森林限界に到達し、7時松手山山頂。眼下に苗場プリンスホテルやその裏のゲレンデ、さらに苗場山あたりの山並みまでが見える。ようやく昇ってきた朝日の斜光が森に陰影を与え、立体的な景色になっていく。まるで少しずつ山が目覚めるようだ。という格好良い風景の感想とは裏腹に、はあバテました。お湯を沸かしてモーニングコーヒーを飲んでようやく落ち着く。朝パンは消化に悪いなあ。
 ここからは腰までの笹と高原植物の間に作られた尾根道を進む。前方の山の頂きを雲がものすごい勢いで流れ去る。『イワン雷帝 第二部』の冒頭のようだ。ところどころに花が咲いている。小さい花が多いのだが、一面の緑色の中では目立つ。名前はわからないがとりあえず写真を撮る。
 一の肩からの急階段をエベレスト登山のようなスローペースで上ると、平標山まで続く稜線に出る。ペースを緩めパノラマのように拡がる光景を眺めて歩く。
 8時過ぎにようやく緑の海の真ん中にぽっこりと聳える平標山山頂(1984m)に着く。360度の展望。でもちょっと曇りで遠望は無い。きつかったけどその疲れは吹き飛ぶほど美しい景色。
 ここから東に山を下る。緑の中をどこまでもまっすぐに進む高原の道。アキアカネがもう飛んでいる。突然頭上をシュッという音とともに何かが通り過ぎる。ツバメだ。こんな風を切る音を出して飛んでいるのか。半分は遊びのようにグルグルと旋回している。また突然ヒバリが遊歩道に飛び出しビックリされられる。
 木道の先ではニッコウキスゲのオレンジ色の花が咲き乱れている。見事な群生だ。だらだらと小山を縦走して、高山植物を楽しんでいると、野球のグランドくらいの大きさの雪渓が見える。まだ残っているんだ。ここは今年は6月まで雪があったらしい。
9時に仙ノ倉山(2026m)。天気が良ければ谷川連峰まで見えるそうだが今日は雲で見えない。谷川岳まで縦走してみたいなあ。
 休憩後ゆっくりと戻る。珍しく写真を撮りすぎているなあ。どこを取っても画になるから仕方がないよな。こんなパノラマな光景が一般道路から2時間登っただけで、山の上にあるなんて想像できないものね。それにしても今日は人が多い。百人くらい会ったのではないかな。でもみなさん楽しそうでした。こんなに最高な天気になるとは思わなかった。かなり日焼けしたよ。
 平標山頂に戻るとアキアカネミッドウェイ海戦の如く乱舞していた。ここから南に下るルートは全部階段なので、登ってくる人たちは死にそうだった。
 下った山の肩あたりに池塘があった。小さな沼みたいなものですね。ワタスゲの白い花が咲き誇り、奥に山と雪渓が見事に借景になっていた。そこにいた外国人カップルとしばしぼーっとして「きれいですねえ」と言いながら眺める。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のようだ。ふと思ったんだけど、日本人ってじーっと景色をただ何分も見ているってあまりしないよね。そのあたりの時間の過ごし方って違うなあと感じた。ワタシもバカみたいになにもしないでボーッと眺めるのは好き。
 階段を下りきると平標山ノ家という小屋に着く。11時ここで清水を補給してメシにする。今日は途中で水切れだった。やばいなあ熱中症になるなあ。水筒の数を増やそうか。今日はホウレンソウのみそ汁(イマイチ)と梅干しのおにぎり。空を見上げると黒い雲が近づいてきて、急に風が強くなる。ゲッ、雷雨になるのかと同じベンチの人に聞いたら、「入道雲にチカラが無いから大丈夫」という。はーそうやって天気を見るのか、勉強になります。
 11時30分、出発。林の中をひたすら下る。12時30分、林道に出ててくてくと広い平坦な道を行く。涼しげな別荘地を抜けると13時30分。出発点の駐車場に到着。50台くらいでほぼ満車だ。しかもいろんなところから来ている。快晴だけどカラッとしてひたすら良い気分。汗もサラッとしている。昼寝をしてからゆっくり帰ろう。
 梅雨も終わり、夏のシーズン到来ですな。今日のような山を体験すると、もうしばらくはジメッとする関東の山は登れないな。夏のあいだは遠いが甲信越に脱出するか!


<参考>
http://alpine.sppd.ne.jp/echigo/tairappyou/index.html