庚申山(栃木県足尾町)

ryotsunoda2005-07-10


 7時出発。いつものように国道17号バイパス経由で桐生に向かい国道122号線に合流する。両毛電鉄の踏切を越え大間々の市街を抜けると曲がりくねった山道に変わり、渡良瀬川沿いに日光まで通じるルートになる。
 国民宿舎かじか荘がある細い山道に入って、しばらく行くと銀山平という広い高原の公園が現れる。新しくできたばかりでキャンプとかもできるようだ。このあたりにはかつての銅山採掘坑跡や引き込み線の鉄橋が残されている。この時期なのに結構宿泊客がいるかじか荘の駐車場の端っこに停める(この先に登山用の駐車スペースがあったが、まッいいか)。
 9時、舗装された登山道を歩き始める。長袖フリースを着ていてちょうど良いくらい。気温は20度くらいじゃないかな。雨は降っていないが、どんよりとして山の上の方はガスっている。湧き水があったので飲んで水筒の中身を入れ替える。無味無臭な感じ。道路には遮断機が下ろされ、ここから先はクルマは入れない。広い道をテクテク歩く。
 道ばたに野いちごが赤く色づいていたので、摘み取って口に入れる。プリプリした舌触りと酸っぱさがミカンのようだ。いかにも天然の味。調子に乗ってあと二三粒食べてみたが、熟しすぎたのかタネがブツブツしてジャリっと砂でも噛んだみたい。もりのいきものだったら、これくらいは大丈夫だろうが、ヒト科としては食いづらいのでペッペと吐き捨てる。
 雨に濡れて霧に霞んだ新緑の山並が美しい。谷を流れ落ちる増水した水の音が轟々とあたりに響き渡り、ダイナミックでサラウンドなBGMとなっている。ここは紅葉の頃も良いかもね。
 60分ほど歩いてようやく一の鳥居に着き森の登山道に入る。庚申山は江戸時代から庚申講の信仰山として栄えていたそうで、道は古道の雰囲気で岩が踏み跡ですり減っていたり、適度に整備されている。
 しばらくは沢沿いの緩い傾斜の道が続く。それにしても新緑が白い霧で霞んだ山はいい。森の中にしばらく立ち止まっていると、風が微かに流れて霧を動かし、一瞬遠くまで見えたと思うと、いつの間にかすべて真っ白になり近くの木々以外はぼんやりとした水墨画のようなシルエットになる。刻々と景色が変わってまったく見飽きない。
 その一方で湿度が高いのは仕方ないので、早々にTシャツ一枚になり、アタマから水をかぶって進む。
 この山は巨岩が多く見られ独特の形から、鏡岩、蛙夫婦岩、仁王門などと古くからの呼び名が残って楽しませてくれる。例によって10分に1度休憩を取る。ふと見ると木の根本にお金が落ちている。拾ってみるとなんと寛永通宝だよ。江戸時代にだれか落としたのだろうか。なんかたのしいねえ。
 二の鳥居は猿田彦神社跡地になっている。神社は60年くらい前に焼失したらしい。ここで11時。ここからお山巡りという奇岩の間を行く周遊ルートを取るか悩む。雨の日は滑りやすく危険という。どうだろうか。ともかくちょっとバテぎみなのでまずメシにしてみるかなと優柔不断な答えを出す。
 5分ほど歩いて、庚申山荘という無人の2階建ての立派な小屋の前に出てベンチに座る。ここは一泊2000円也。但し自炊のみ。そもそも庚申山はその奥にある皇海山までの縦走ルートの入り口だったのでかつては賑わったようだ。いまは群馬側からのルートができたのでいつも小屋は空いているという。
 梅干しのおにぎりとカップの豚汁(練り味噌タイプ)をガサゴソとコンビニ袋から取り出す。豚汁はいいね、暖まってさ。♪トンジル、トンジル、おいしいトンジル…と歌いながらお湯の沸くのを待つ。ここからは山荘の後ろに控える岩山が見えるはずなのだが、まったく霧で見えない。
 暖かい食事で一息ついて山頂を目指す。足場が悪くなり、目の前に高さ50メートル以上はある垂直に切り立った岩が行く手を阻む。どこから登るんだと見回すと、わずかな斜面を削ってへばりつくように岩を回り込み登っていく道が切り開かれている。頭上からは岩から雨垂れが流れてくるなかを進む。岩がゴロゴロしていたり溶岩性の赤い軽石が泥と混じり、ただでさえ雨で足場が悪いのにさらに滑る。
 その途中ですれ違った熟年夫婦に「これが天然記念物のここにだけ自生するコウシンソウですかね」と、岩場に咲いている全長5センチくらいの花を指さされる。うーんわかりません。
 岩場を回り込んだと思うと、更に細い道になり岩に付けられた鎖を掴んで抜ける。と思うと金属製のハシゴの連続で、垂直に上へ上へと登っていく感じだ。泥だらけで滑らないように必死にしがみつく姿は他人に見せたくない…トホホ。
下がえぐれ空洞になりくぐれそうな奇岩がいくつもあって面白い。南総里見八犬伝にも書かれているという。当時の観光名所だったのかな。そもそもこの山塊は日光の行者の修行道だったそうだ。だからこんなにハードなのか。ここでお山巡りとの分岐点。行けるかなあ…。ともかくここまで来たので頂上に意地になって向かう。
 あまりの急勾配で緊張するルートのためか、いい加減足が上がらなくなってくる。なんか余裕がほとんどなくなる。でもようやく尾根道に出たので、脇目もふらずにひたすら進む。ようやくちょっとした高い丘に着く、庚申山山頂(1901m)。13時だ。 疲れたあ。岩場に寝転がりしばし呆ける。この先に360度の展望台があるというが、天気は相変わらずなのでパスする。15分寝てから降りはじめる。気がついたのだが、下りのほうが怖いんだよね。特にハシゴとかさ滑るので。慎重すぎるのか下りでも全然コースタイムが短縮されない。ようやくお山巡りとの分岐点にだどり着く。熟考の末、悔しいが断念する。疲れているしさ、足場の悪い岩場をこれから90分も歩けないよ。同じルートをひたすら戻ることにする。コウシンソウらしき花を撮影するが、小さすぎて暗すぎてピントが合わない。(結局ちがったみたい)でもこの時期いろんな花が所々で咲いていて楽しいね。花の名前も覚えようかな。
 一の鳥居まで戻り、近くにある庚申七滝を観に行く。狭い岩の間を増水して流れているので迫力がある。下の方まで周遊コースもあるが疲れているので断念。ビール片手に魚肉ソーセージを食べていたいかにもヤマヤなおじさんとしばし歓談する。ここは四季いつ来てもいいよと薦められる。ホント桐生の人は話好きだなあ。
 ここからまた林道歩きが延々と続く。駐車場に戻ったのが17時。クルマを出すと雨が降り始め、やがて本降りになった。
 次回は山荘に泊まり、お山巡りをして、皇海山まで行ってみようかな。

<参考>
http://www.tekipaki.jp/~akagi/kousin040608/sub3-150.htm