両神山(埼玉県両神村)

ryotsunoda2005-06-26


 秩父の山は奥秩父じゃなく、奥武蔵といいます。奥秩父は山梨の山です。あーややこしい。
 金曜日23時「タイガー&ドラゴン」の最終回を横目で見ながら就寝。土曜日2時30分起きて、なんか食べて(記憶にない)3時出発。さすがに真っ暗、車も少ない。秩父から山間部に入り、一車線の道路を上り、5時に日向大谷の駐車場。すでに数台止まっている、なかには車内で寝ている人も。陽は昇っているようだが、まだここまでは差し込んでこない。涼しいという感じでもなく、山村の夜明け前、どんよりとした空気だ。
 駐車場脇の石段の登山口から、民宿両神山荘の前を通り過ぎ、山に入っていく。この山は私有地が多いそうだ。だから以前はあった白井差登山口が閉鎖されたりして、ここがメインの登山口になっているという。
 しばらくは植林された杉林の間の平坦な道を進む。道は整備されて歩きやすい。少し登りはじめたかなと思う頃、木々の間から陽が斜めに差し込んで来て良い雰囲気。
 今日は確実に猛暑になるから、午前中で往復しようと目論んで来たけど、この時間、ここは谷なので山の空気がまだ淀んだまま、湿度が以外と高く次第に汗だくになる。沢の音が聞こえ、きれいな流れが近くにあるのに全然涼しくならない。水は冷たく何度もアタマからかぶるが、一向に効き目がないのはなぜだ。このあたりに来るともう自然林だけになり、セミの声、鳥の声が森に響き渡る。
 長い沢沿いの道と別れを告げて、徐々に高度を上げていく。また本日も15分に一度休憩を入れながら進む。無理をせずに心拍数を上げないようにしてみる。やがてチョロチョロと湧き水が出ている弘法の井戸に着き、顔を洗いアリガタイ水を飲む。まあまあ美味いかな?
 前方に突然二階建ての山小屋「清滝小屋」が現れる。おやじさんだろうか、ラジオを鳴らしながら布団を干していた。軽くあいさつをしてベンチにへたり込む。ここまで2時間かかった。はーバテた。一泊食事付きで5000円。素泊まり3000円。ここはテントも張れるみたい(一人500円)です。
 小屋の裏手から九十九折れの登りになる。さっきより急勾配だけど、このあたりに来ると風が抜けてくるので、楽になり汗の噴出も減る。
 30分で産体尾根に出る。ここから尾根歩きになり、木の根の階段と鎖場が出てくる。鎖場は使わないでも大丈夫なくらいで、危険を感じずに登る。
 さらに30分後、朱色の鳥居が現れた。両神神社本社だ。開けた土地にある神社。いまは痛まないようにすべてトタンに覆われていて無粋な景色。ベンチに倒れ込むように寝転がる。見上げると10メートル以上の立派な神木が何本もあるのに気づく。社の前にいる狛犬はオオカミ。秩父の神社はみんなどこもオオカミです。
 神社と言えば、最近読んだ本に、私が長らく疑問に思っていた、「なぜ山には神社しかないのか?」の答えがあった。
 昔は山には寺と神社が共存していて、日本独自の権現信仰が長らくあったという。仏が現世に神に姿を変えて現れるという、神仏習合の考えがあった。しかし明治の廃仏毀釈で寺が壊されたので、多くは寂れ神社しか残されていないという。なるほど、現実的な答えですね。仏教、神道、とべつに第三の山岳宗教を考えないと山はわからないのですねえ。
 充分休憩して進むと、時折登るが徐々に平坦な道が多くなる。両神山は遠くから望むと、山頂がのこぎりの歯のようになっている。ここがそのあたりか。さいごの岩場の鎖場を抜けると頂上(1723m)に着く。
 快晴の下、南と西に視界が開けている。遠くの山々はぼんやりとしてあまりよく見えないが、なんとも爽快。4時間かけて来た甲斐はあったねえ。
 暑いので、15分で下山開始。この山は冬とか雪のときに来たら気持ち良いんじゃないかねえ。ルートも面白く変化に富んでいるし。といいつつもかなりバテているので、早いが両神神社本社で昼食にする。
 今日はついに買った、バーナー(なべとセットで3000円の格安だった)でカップ素うどんを食べるのだ!さっそく火を付けようとするのだが、あれ付かないぞ。同じテーブルに陣取っていた同年輩の男性が見かねて、「これはガスの具合か、下が平らじゃないと付かないんですよ」と教えてくれる。色々置く場所を移動してようやく付く。助かったあ。
 これがわんさか人がいる丹沢とかだったら「フンど素人めが」という視線を送るだけで、だれも教えてくれないんだろうな。教えてくれた人は一緒の時間に登りはじめながらも、すごくゆっくり登って来ている不思議な人だった。
 お湯が沸くまでストレッチをしていると、重要なことに気づく。ガーン箸を忘れたあ!さりげなくザックを探るも無い!さらに奥を探り救急セットの片隅にようやく先割れスプーンを発見。湯を注ぎ待つこと5分でできあがり。なかなか良いお味でおいしゅうございました。具材にもう一工夫するといいかな。
 さあてゆっくりと降りていくかな。この時間になると登ってくる人が多くなる。それでも今日はトータルで30人くらいかな。混雑シーズンはGWのツツジの時期なのだろうね。
 清滝小屋を過ぎ、弘法の井戸で水を汲んでいると、またも同年配の男性が声を掛けてきた。「この山ははじめてですか」「そうです、あなたもですか」「やーいい山ですね」「ここまでくる道の緑もよかったですよ」「涼しくて静かでいいですね」。町中ではありえない見知らぬ人と素朴な会話が成立するのも、良い山の条件のような気がする。
 これだけ長時間歩いていると、つま先が痛くなるのは当然。これが安いトレッキングシューズの限界なのか。何度かつま先を木の根にぶつけ、その痛みで涙が出そうになる。沢に出ると、早速靴を脱ぎ流れに足を浸す。ひゃあ冷たい。人目が無いのでTシャツを脱ぎ、タオルでごしごし身体を拭く。ああ良い気分だなあ。
 緑が朝の印象と全然違う。太陽が高くなって、少しずつ移動するたびに、光線の具合で林の緑の様相が次々に変わって行くのを楽しむ。ぜいたくだ。写真を撮るためだけ一日いても飽きないだろうな。この山はゆっくりと時間をかけて休み休み登りたのしむのが一番良さそうだな。今日はちょっと早くから登りはじめすぎたなあ。9時頃から夕方5時頃までたっぷりと過ごしてちょうど良いんじゃないだろうか。
 30分ほど呆けてふたたび歩き出す。この時間になると気化熱のせいか、水の上をさわやかな風が吹き抜ける。
 午後1時に無事駐車場にたどり着く。全行程で8時間。先に着いていた人は車の窓を全開にして昼寝をしていた。私も真似して昼寝。ホント昔なつかしい夏休みの午睡だよ。気だるく気持ちが良い。おやすみなさい……ZZZZZZ。