草映画17

ryotsunoda2005-06-24


 「デジタルシネマ」;デジタルシネマ研究会編 という本をパラパラとめくる。まあよくある報告書のつまみ食いで、企画書のネタ本になるようなものです。
 まあこの本にはいろんなウン億円する英語名の機材や訳のわからない転送レートの数値、将来のデジタルシネマ像とか人材育成とかいう景気の良い文章が紹介されている。
 面白かったのが、それに混じって、デジタルシネマの製作例に出ている中村幻児の『ロード88』。(だれかみたぁ?)
内容は「白血病の少女が生きている証を得るために、四国八十八カ所お遍路さんの旅に挑むロードムービー
 ………。えー、いつの時代ですか?ビリー・ワイルダーがさ、アカデミー賞授賞式で「21世紀ハードの発達は限りなく進んで行くようですが、では果たしてソフトはどうするんですか?」と言ったのを思い出し、暗澹たる気持ちになりました。
 それはともかく、私の興味のあった部分はそこではなく、撮影30日予算が1億5000万円という部分です。
 まあフィルム代はほぼ無し、ポストプロ、撮影機材も格安と考えて、ほぼオールロケで、役者もギャラの高い役者は出てないようだし(新人女優と小倉寛久、長谷川初範という並び)、製作予算はまあまあ多いのだろうか。そもそも撮影日数30日は多いよね。いまは14日から20日程度じゃないか普通。この場合は移動の多いロードムービーだからこれだけ取ったのか。となると相場は20日で1億くらいなのかなあ?1億ねえ…

 私はマリー・アントワネットみたいに、「面白い映画が見られないのなら、自分で作ればいいじゃないの」と口走ってしまう不埒な人間なので、そのうちに断頭台の露と消えてしまうかもしれません。でもまあ『ロード88』を観るヒマがあったら、草映画をやっているほうが面白いよなー。

 草映画をはじめようと思ったとき、何を基準とするかを自分の生活水準から考えてみて、中央アジアの小国に暮らしている映画ヲタクと同じレベルや条件で、どれくらいのものができるのだろうかと想像してみたのですね。
 彼らと同じく、お金もないし、機材もDVカメラ、ヒマな野郎どもが集まって何ができるのだろうか。
 10年前とちがってインターネットもDVDもあるのだし、国際ナントカ映画祭が無くったって、人に見せる方法はいくらでもあるしね。なにも障碍は無いことがわかった。
 
 みんな映画を観過ぎて映画を作れなくなっている。まあこれは昔からある現象だけどね。映画を観てバカ映画と喜んでいるよりは、自分がバカになって映画作った方が楽しいもんね。浴びるほど映画を観れば、いくらでもやることは見つかると思うのだが。他人のことはさておき…

 
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 なんとか編集は終わり、後は台詞と音を入れるだけとなりました。アフレコ、ダビング作業はF氏の自宅でやるので、結構大きなファイルをどうしようかなと思ったが、ウチではDVDを焼けないしAVIファイルなので容量が大きすぎるから、PCごと運ぶことにした。
 9月4日(土)小雨の中、粛々と自宅スタジオに機材を運ぶ。Mo氏は4chミキサーとマイク2本及びマイクスタンドとコードを持ってきて、既にセッティングは終わっていた。
まずはメシを食う。これが最優先事項。さあて始めよう、といきなりPCのファンの電源が吹っ飛ぶわ、USB接続がおかしかったりして時間が取られる。教訓としては面倒だからといって、キーボートやマウスや電源コードを持ってこないで現地調達しようとすると却って手間になるということ。
 とにかく復旧してアフレコから始める。ビデオの場合当たり前だが、8mmとちがい映写機の音やノイズが入らないので助かる。巻き戻しも簡単だしカーテンを閉めなくてもOKだ。ロングショットが多く長台詞ばかりなので、なんとなく画と音が合ってしまうから不思議だ。
 大したNGもなく進む。もうここまで来ると台詞を書き換えるとかメンドウな作業はやる気もない。アップはリップシンクしないと変だけど、まっいいか(>良くないと思う)。
 音のレベル調整もほとんどせずに、編集ソフトPremiereの標準に合わせただけで済んだ。ミキサーは全然使わないねえ。そもそもソフト上で、音声トラックが独立しているので、フェーダーを使ってミキシングする必要がないし、後でエコーとか色々フィルターを掛けて弄れるからね。
 8mmだと磁気録音だったから「せーの」で一発録りだけど、細かい失敗でも全部やり直したりしないで済む。ホントにガレージスタジオ状態ですな。
 思った以上にアフレコはスムーズに終わる。みなさん芸達者です。あとはダビング作業だが、これは私一人でみんなが酒を飲んでいるのを横目で見ながら進める。
 なるべくレベルの上げ下げをハリウッド調に意識してやる。邦画は自然主義的に画と音を一致させて、静かで見たまんま雰囲気を作って、音が主張することは少ないでしょ。ハリウッドの場合だと、次のシーンに音や音楽をこぼしたり、シーン前から音が始まったり、アタック(心理的な音ね、ホラーの重低音とか)をつけたする。音の大きさの上げ下げを思い切り派手にメリハリをつけてやるじゃない。真似してやってみたが、うまくいったかな?
 呆気なくダビングも終わり、あとはプレビューしたら、データをMpeg-2に変換するだけ。圧縮に時間がかかるので、その間近くの韓国家庭料理屋に行き、辛い料理をひいひい言いながら食べる。腹一杯になって戻ってくると、うーんマシンがハングアップしているよ。Premiereの旧バージョンはやはりうまく行かないなあ、とほほ。
 結局我が家に持ち帰り、翌日データを分割して、それぞれを圧縮し、aviutで結合する。それをCD-RにコピーしてF氏に郵送する。いま郵便料金もCD、DVDは小包とは別で安くなったのね。
 今回ネットで見つけた無料のデータ閲覧スペースを借りて、撮影後にまず仮繋ぎしたものを、アップしてみんなでダウンロードしてプレビューを楽しんでみた。 人を集めなくても観られ反響がすぐに来るのはいいねえ。ただ無料だとダウンロード時間がかかりすぎて評判悪かった。今後は有料のデータスペースを借りるか、自サーバを立ててストリーミングできるようにしよう。
 スタッフ試写しながら、テレビ電話会議でもしたらさ、ハリウッド業界みたいで格好良いじゃん。そういう意味で比喩でなく、既にスタジオレコーディングと同じ作業レベルになっていると思うよ。もはやデスクトップムービーですな。
 F氏は今回の『黒の倒錯者たち』と前回の『悪魔の屍』のデータと現場のスチル写真をオーサリングして仕上げてくれた。それをMo氏がコピー、ジャケットはみんなで案を持ち寄り、Yahoo!のグループ内で議論し合い決定した。今回参加できなかった撮影担当のNは「どうやら完成度が上がり、映画のカタチになってきたね」と言ってくれた。
 そう、ここまで来たら、次はもっとストーリーがわかるものを…、という大勢の意見に逆らえなくなって来ている。あと女性を出せという圧力が各方面から激しく来ている。色々注文がうるさい。お前らいい加減にしろよな!(逆ギレ)


では、
<今後のラインナップ>
 ・韓流ドラマ(ストーリーのわかるもの) 
   泣きます!人が死にます!記憶喪失になります!
   HDVカメラで撮ってみるかな?
 ・日帰りキャンプロケ、スプラッター
   血だらけになるので、暖かい季節にやろうね。
 ・同リメイク 時代劇版
   ここまでできたら大したもの。
 ・『エルトポ』のような時代劇
   もはや訳がわからん世界です。

 おわかりのように上記は思いつきなので、どう実現していくのか私にもわかりません。その間に誰かが撮るのなら私は撮影監督と役者と車輌部をやります。