手討

手討 [VHS]
(1963大映田中徳三
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD21083/index.html
観ているうちに、お菊さんが皿を割る話になったので、えっ番町皿屋敷じゃんとひっくり返る。しかも怪談じゃなくて純愛ものに変わっていく有り様の上手さに唸る。岡本綺堂原作とあったけど、京極夏彦の「嗤う伊右衛門」のような反転図絵だ。皿を割って男の真意を確かめる、が為に手討ちになる悲哀。こういう婦女子向け作品はタルイのであまり好きではないのが本音。身分差や本音と建前のドラマの構築の仕方、追いつめ方がよくできている。定番といったらそれまでですがね。
田中徳三の演出は、顔のアップ中心ですぐに移動車で回り込むパターンが堪え性が無く軽い。ただこの時分に大映の照明パターンが出来上がっていて、やたら行灯の光だけで描こうとするので、画面がいかにも暗すぎる。現場の技術者が酔っているのがわかる。まあ芸術的にはいいんだろうが、観ていると気分が荒むことは確か。
技術の高度化による再現性=表現力のアップ、ではあるが、それが良いかというと話は別だろう。逆に言うと技術力(職人芸)だけが、プロの誇りとなってしまい、素人を峻別するとともに未知の新しいものを同時に排除するシステムにより飽和点を迎えてしまうわけで、それも斜陽化への遠因だったと思う。