諏訪山

群馬県上野村
GWの最終日、まあどこ行っても混んでいるのだろうからという理由でマイナーどころを選んでいく。
5時30分出。国道254号線を児玉から一度迷ってから462号線に左折、山間に向かうと、突如大きなダムが見え、静かな水面に山々の緑が映える神流湖を周回ドライブ。くねくねと曲がりくねった道が終わりさらに上流部へと進む。神流町を抜け、釣り人がたむろする渓流を横目で見て上野村に入る。この村の道路は整備され公共施設や道標も多い。ご存知の通り、ここは例の御巣鷹山で有名になった村だ。いまはひっそりとしている。林道の入口を見落とし、村を抜けてしまいUターンする。
ようやくみつけた楢原林道は急坂、ローギアで落石をよけながらでこぼこ道を登る。目の前に朝日に照らされた緑の葉っぱがどこまでも広がる、思わず窓を全開にすると爽やかな風が吹き抜け鳥の声が山にこだまする。ああこれだよこれと一気に気分が盛り上がる。
10分くらいで林道の終わりに到着。すでに2台止まっていた。晴天、やや涼し。
8時30分さて行くか。プレハブのお堂の脇を進み、コンクリート堰の横の道を沢沿いに登る。沢に別れを告げると一気に急登だ。ひええ全然進まないよお。体調がさいきんいま一つなので今日の行程、12キロ、7時間というのがキツイかなと思っていたのだけどいきなりハードで泣く。もう15分に一回休憩を入れる。汗がダクダク出てくる。九十九折れの道の途中には囲いで覆われ中が見えない立派なお堂が2つあった。まだ山開きをしていないのかな。30分ほど行くとようやく平らな道に出て頂上を右手にぐるり巻くと橋の沢の屋根に出た。なんだ思ったより楽じゃん。
ここからは延々と尾根道を行く。といってもアップダウンは少なく頂上を左右に巻いてなるべく水平な道になっているので助かる。今日の山は植林が無くもう全部自然林ばかりなので、ワイルドな感じがまた深山幽谷でよろしい。ようやく一年ぶりにこの季節が来たかと感慨もひとしお。
しばらく行くと巨石がありそこにお堂がまたある。八海山なんとかと書いてある、さっきは武尊山なんとかだったな、山講の関係だろうか。こういうのも知識がないとさっぱりわからんよね。
拝んでから行こうとすると道標が下を向いている。ん、覗くと鎖があり、その先にアルミの梯子がすえつけられていて10メートルほど下がる。へっぴり腰で梯子にしがみついて降りる。緊張するぅ。
開けた斜面を一望するあたりにくると、日陰の新緑に陽光があたり、葉の裏側を透かし森全体がうっすらと緑のフィルターがかかったような不思議な光が覆い尽くし、褐色の落ち葉と相俟って穏やかな空気に包まれる。この季節ならでは、だよね。
ずっとハイキングコースのような道だけど、道幅が細いので踏み外すと落ちちゃうので案外疲れる。雪山だと大変そうだ。
浜平からのコースとの合流地点、湯の沢の尾根を過ぎ、しばらくいくとチリーンチリーンと熊よけのベルの音がする。だれか来たなと思い岩場のカーブを曲がると、編み笠に白い着物の男が立っていた。…斬るか。と一瞬思ったが机龍之介でないのでやめる。あの音は巡礼鈴だったのね。それにしてもなぜ巡礼だったのだろうか、聞けばよかったなあ。驚いてそれどころではなかった。このルートは巡礼道なのだろうか。そういえば登山道のような楽しみのルートとしては出来ていない。景色よりどちらかというと日々の信仰のため往来がしやすいようにはできているみたいだ。
壊れかけた避難小屋(弘法小屋)に着く10時30分。焚き火のあとがあったので泊まる人もいるんだ。ここまでは…なんだ楽勝じゃん。2/3以上来たモンね。
だがここからが木の根っこを足場にしての登りになって行く。このあたりには胴回り1メートル以上の見事な巨木がごろごろして道を塞いでいたりする。
と行く手にそびえる高さそうな30メートルくらいの細長い岩山が見える。中国の山水画の山みたい。山全体に薄紅色のヤマツツジが咲き乱れていてキレイだ。へえあの山の近くを行くのかな、と目を凝らすと頂上にお堂が建っている。へっもしかしてあれを登るの?ととてもびびる。まあ行って見るかとまたまたアルミ梯子が出てくる。それも三連で繋がっているので15メートル、両端は切れていて何も無いし、やたら揺れる。とにかく涙目で登る。上りきるとさらに鎖があり、えいやと渾身の力で登る。ほっとして振り返るとそこは絶景だ。いままで歩いてきた後ろから山並みからぜんぶ展望できた。俄然登る気になる。岩山を迂回しながら後ろ側のガレ場を登っていく。ようやっとさっき見たお堂に行き着く。三笠山頂上(1480m)だ。
360度のパノラマが拡がり、遠く北方に数筋の雪渓を残した日光白根山が黒々とした姿を見せる。先回登った荒船山も西に見える。南には壁のような御巣鷹山。すべての山々が深い緑に埋まっている。数ヶ月前の枯れ山との違いにいまさらながら感嘆する。やー最高だねえ。太陽が照りつけるが暑くも無く、風もそれほどなく、高原の天気だねえ。いいねえいいねえすっかり全身の力が抜けていく。
11時ここでメシかなあ、でももうちょっとだから諏訪山まで行くか。裏手に行くと、ロープがあり、滑りそうな岩を5メートルくらい慎重にゆっくりと降りる。しかしふたたび道は登り出す。それも結構ハードだ。ここまで来ると全身疲労がボディブローのように効きだす。行っても行っても辿り着かない。山頂がわかれば良いのだけど奥へ隠れていてはっきりとはわからないので余計疲れる。はあはあいいながらようやっと諏訪山(1549m)に着く11時40分。
なだらかな山頂は展望が無い。さっきの展望良好な三笠山頂に戻ってメシにしたいのだが、ダメだバテたあ。座り込みさっそくオニギリ二個とバナナを食べる。今日は水を水筒二本ペットボトル一本の総量1.5Lくらい持ってきたが既に二本はカラ。水の飲みすぎかしらん。ぼーっと落ち葉の積もった中で休憩する。他にジジババ4人ほどのグループがなんかはしゃいでいる。
今度はレジャーシートを持ってこよう、斜面では座りづらいから。20分ほど経ってようやく出発する。ザックがどうも身体にフィットしない。腰のバンドの位置がどうも高いので腹を圧迫する。肩のベルトの位置も違うので重心のバランスが良くない。もうちょっと大きいのにすれば良かった。安物買いのゼニ失いですな。
同じルートを戻るのでそれほど不安は無い。途中大きな倒木が登山道を塞いでいるのを避けるためにかがもうとしたら、ガツンという衝撃がコメカミを打ちしばらく痛みでうずくまる。倒木の伸びていた大枝の端がぶつかったようで、それに気づかなかった。出血はしないがちょっと傷だらけの人生になる。
それにもめげずに歩いていくと、今度は曲がった木の枝が落ちていて動く。ギョッとして立ち止まるとそのまま逃げていく。赤銅色で50センチくらいヤマカガシかな。お互いにびっくり。
休んでいるとカメラを持った人からシャクナゲにはまだ早いですねと言われる。言われてもわからないのだがとりあえずうなずく。
疲労が極に達する頃天候も曇りだし、陽が傾いてくると、ああ山の中に俺一人なんだと孤独を感じるようになる。痛む足を引きずりながら降りていく。ようやく出発点に辿り着く、15時30分。やー歩いたねえ。久しぶりに心底疲れたあ。帰りの2時間30分の運転はキツかったです。でも大人の遠足としては季節も天気もサイコーでしたね。
夜は爆睡する。ZZZZZZZ…。

<参考>
http://www.vill.ueno.gunma.jp/kanko/yamakawasawa/
http://home7.highway.ne.jp/mima/tozan/02/020429.htm