女ざむらい只今参上

美空ひばり DVD-BOX 6
(1958東宝渡辺邦男
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD25823/index.html
つまらなーい。びっくりするほど手抜きだなあ。渡辺邦男がフリーで撮りまくっていた頃の一本だろうか。話が破綻しているのはご愛嬌としても、美空ひばりの男装に勤皇の志士が絡む道中もの、という定番幕の内弁当なのに弾けないのは東宝の明朗調なのか。
なんか時代劇の艶っぽさが無いなあ、ドタバタと上映プログラムに穴が開くからひばりのスケジュール押さえたんでここは早撮りの天皇にお任せしましょうと、とりあえず作りましたあという雰囲気がプンプンする。
PCL=東宝映画の流れは、ファンタジーとしての時代劇よりも、歴史ものの延長に時代劇、ある種のリアリズム合理主義があるのではないでしょうか。分かりやすく言うと司馬遼太郎的時代劇史観だな(わかりにくいって…)。
その行き着くところが黒沢明の時代劇だと思う。リアリズムの極北がスプラッター表現であり残酷モノになったのは黒沢の天賦の才もあるが、東宝という会社の社風もあるのではないか?
一方ではファンタジーが、SF特撮としてのゴジラ映画に帰結していく流れも合理リアリズム主義のような気がする。それは大映大魔神の特撮時代劇とはまたちがう距離感じゃないかな。それは人間臭さの欠如といても良いではないか。ゴジラ本多猪四郎の場合は天災(英霊という説もあるが)の比喩であり、福田純だと怪獣プロレスショーになるんだよね。あんまり人間個人が重要じゃないということでは同じだと思う。
なのでさらに話を飛ばすと、黒沢明ヒューマニズムというのがいかがわしいと皮膚感覚で思えるのは、合理的というか冷たい目線が感じられる、そういうタイプの映画ばかりを作る社風に、実はどっぷりと浸かっているのが伝わるからだろうなあ。