忠直卿行状記

忠直卿行状記 [VHS]
(1960大映森一生
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD23304/index.html
大映元社長の菊池寛原作のお堅いハナシ。徳川家康の孫の大名が、「まわりの皆は褒め称えてくれるけど、本当の友だちにはなってくれないんだ」と被害妄想まるだしの疑心暗鬼に陥り、困ったちゃんの暴れん坊殿様になるが、ヒトのまごごろに出会い人間性を取り戻すという、白樺派的な時代劇解釈もの。
うーん「仲良きことは美しき哉」ですな、ってそれは武者小路センセじゃないの。まあこれは、金持ちのボンボンのボクってなあに?というタワケタ世迷言なのですね。昨今の流行りコトバでいえば自分探しみたいなもの。でも城主がそれをやっちゃいけませんなあ。お陰で迷惑を被った家臣が切腹しまくる。それでも天晴れ、「余が悪かったこれから改心する」で収まるのか?
菊池寛とかの芸術家の精神構造が透けて見える気がする。あの世代の傲慢な理想主義が見え隠れするね。理想主義ともいうが。所詮は元戦犯だし仕方ないか。
森一生は手堅く収めている。芸術祭参加作品なのになぜか白黒映画。御殿場で撮った大エキストラシーンがすごい(短いが)。きわめて分かりやすく撮っているね、雷蔵の狂気とかも分かり易すぎるかな。たぶん娯楽なら短いカットで、芸術作品だったら長いカットを撮りましょうという割りきりが出来る人で、それを本当にやってしまうタイプの職人なのだと思う。