神州天馬侠
- 作者: 吉川英治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1989/12/26
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
途中までは戦国時代、武田信玄の孫の伊那丸が仲間を集めいろんな敵と戦う冒険活劇なのだけど、途中から話が膠着してダンドリばかりになる。そうねえテレビゲームの中盤、ストーリーを持たせるためにやたら新キャラが出てきて対決ばかりで、全然進まなくなるのと同じ状態ですな。話はお子様向けなのでユルいですね。でもものすごく強引に引っ張るチカラはある、のでかなり一気に読む。
忠君愛国っぽさがあちこちに散りばめられているのが異様なノリですね。「のらくろ」を読んだときにも感じたねえ。あっぱれ日本男児とか言って人殺したり、自決したりする。そのテンションの上がり具合についていけなかったりする。
最後に歴史は変えられないので、伊那丸が武田家復興できるはずもない。で、どうするかというと、「いま国の中だけで争っていてはいけない。広く目を外に向けるのだ。もっと日本という単位で物事を考えて外に出ていかなければいけないのだ」というような演説が入って終わる。
すげえ危険だよね、吉川英治。子どもだったら洗脳されちゃうよ。国民的作家と言われるんだよね。まああのころの文士なんてそんなものだからね。戦犯で追放されたんだっけ?こんど吉川英治記念館に行ってみよう。「宮本武蔵」もこんなのかしらん。「三国志」は途中で飽きてやめたけどさ。「鳴門秘帖」はふつうにおもしろかった気がする。
ところどころに描かれた弥生美術館にあるような挿画が、まったく劇画なことに気づきびっくりする(山口将吉郎という人)。そういえば横尾忠則が、弥生美術館で模写をしていたと新聞記事を読んだことがあった。彼の原点も愛国少年だったのだろうね。
<参考>
http://www.iiclo.or.jp/100books/1868/htm/051main.htm