仙人ヶ岳(栃木県足利市と群馬県桐生市の県境)

春はあけぼのと昔から申しますが、もう5時過ぎには明るいのですね。今日はちょいと長丁場なのでさっそく出かける。栃木に入り渡良瀬川を越え、鄙びたローカル線の駅を横目に、萌黄色に木が芽吹いてきた春めく山々を眺める。窓を全開すると、ちょっと寒いので半開きにして、春風の気持ちよさを満喫。ホーホケッキョケッ…ツキョというへたくそなウグイスの声を聞きながら、山間の森の入口にある、石尊寺の駐車スペースにクルマを停める。
7時、まだだれもいない。水道場があるので、水を自宅のと詰め替え飲んでみる。そんなにうまい水でもない。曇っていて薄ら寒い。まわりを杉で覆われた山寺の雰囲気。でもまったく道は整備されておらず、石段とかもない。ひたすら長い登山道が続く。しばらくいくと、「女人禁制」の石塔。修験者の山だったらしい。でもそれほど傾斜が急だという訳でもない。だらだらと岩場のある陽当たりの良い尾根道を登る。7時45分。石尊寺奥の院があるピークに到着。奥の院は岩場の崖にへばりついている小さな社。正面に立って見上げると額の両側に天狗と河童の面が飾られていた。なぜカッパか?
ここからは広い尾根道でほぼ平らなのでどんどん進む。フリースを脱ぎTシャツ一枚になる。石尊山頂も難なく通過。さすがにこの時間になると暑い。ヤマツツジも日なたではちょっと咲いている。ここらの山はツツジとマツがいたるところにある。ゴールデンウイークの頃には山中真っ赤な花で埋まるんだろうな。深高山も通過するが印象無し。春霞のぼんやりとした眺めで特になにもいうことないなあ。遠くが見えるわけでもないしね。
急坂をロープに捕まりながら下っていくとやがて分岐路に着き、さらに降りていくと舗装された林道にぶつかる。それに沿って北に向かう。カタクリの花らしきものが咲いていた。植林された杉林を降りて行くと猪子峠の鉄塔近くでようやく人とすれ違う。普通はこの下のトンネル脇にある駐車場から歩き出すようだ。ここで9時。仙人ヶ岳まで2.5キロの道標が出る。
このあたりから急坂になってくる。ハイキングコースと称しているけど結構ハードだと思うな。登っているみなさんは花目当てなのかカメラを抱えたり、じっと眺めて詳しく語っている人が多い。わたしは全然わからんので、すれ違うときに「ニリンソウが咲いてます」とか「なんとかヤシロがもうすぐだねえ」とか言われても笑って誤魔化し曖昧に返事するしかないです。
やせた尾根歩きが多くなり、岩場を乗り越えて進むようになりアップダウンも増えてきて時間が思ったよりかかるようになってきた。右手に松田ダムの狭い湖面が見下ろせる。
なんか先の方が騒がしい。ごちゃごちゃ喋っている声がずっと聞こえる。ようやく原因がわかった。このルートの難所、犬帰りだ。垂直の立った10メートルの岩場を上がるのだ。それを中高年グループ総勢20人が挑戦していたのだ。下に来ると結構高い。迂回する巻き道もあるが、登ってみることにする。足場がよくわからないがとりあえず行く。ひとつ2メートルくらいの岩を回って登る。その先になにも手がかりがないなあとふと横を見ると鎖があった。へんなところから登ったようだ。平行移動して、よいしょと鎖に捕まりながら登る。ほぼ垂直で、しかも足を引っ掛けるところがなかなか見つからない。いま履いているトレッキングシューズの靴底がかなり磨耗していることに気づく。けっこう滑る。ほんとうは鎖に頼らず腕力だけで昇りたいんだけども、ちょっと怖いし落ちるとイヤなので、鎖を思い切り掴みながら登る。全体重を預けるのはえらく緊張する。本当は危ないんだけど、エイヤと片足を勢いをつけて高く上げて足場を確保する。そのまま身体を持ち上げて行く。ここは下りの方が楽だと思う。肩と腕がちょっと痛い、変な筋肉の使い方をしたかな。
その後も尾根道のアップダウンを繰り返す。もういい加減飽きた頃に右手が開けた。木が一本も生えていない山の斜面が現れた。どうやら山火事にでも遭ったようだ。日向なので陽射しが厳しい。こりゃ夏には登れんな。幸い風が斜面を登ってくるので涼しかった。ハエやキタテハのような蝶、蟻が出てていた。あとカナヘビがやたらいて日なたぼっこをしているのか、時折ガサッと音を立てるので驚くこと数十回。
ようやく山頂との分岐点に着き、先行の団体さんを抜いていく。最後のひと登りがなかなか着かない。ひいこら言ってようやく千人ヶ岳663メートルに着いたのは11時40分だった。
山頂はなだらかに登山道沿いに広場となってハイキングの人々で賑わっていた。コンビニおにぎり二個食べてしばし呆ける。水がもうそろそろ無くなる。暑くなると消費が激しいなあ。次回からちょっと量を増やそう。
12時に出発。今日は軽いハイキング気分で靴紐を緩く結んでいたので、足先が痛くなってきた。紐を結びなおすが手遅れの感。しかも久しぶりに右ひざがイカレたのでサポータをする。熊の分岐を過ぎるとえらい急坂。でも痛みが出ないように行くのですごくスローペース。すこしびっこ引きになる。
急坂を過ぎると沢が現れて、沢沿いの道を左右に渡りながら進むので、傾斜が無くなり助かる。この靴の防水機能ももうダメだな。注意しないと沁みてくる。途中、生不動という小さな社があったので休憩。延々と歩くもコースに変化がなく飽きる。まあ沢の涼しさがあるから良しとしよう。小さな不動沢の滝があったりするも、あっけなく岩切の登山口に出る。13時40分。
ここから県道歩きだ。だらだらと仕方ないが歩く。60分歩いて最初の石尊寺に辿り着く。14時40分。やあ歩いたねえ。今日は16キロくらいかな。帰宅しさすがに疲労する。