草映画13

これまで2本の短編作品を作り、セリフなし完成尺5分を一日の撮影で撮りきるというところまではクリアできた。草映画は私の個人製作プロダクションじゃないので、私ひとりだけができるやり方でやっても仕方がない。まあ誰でも映画なんてものは作れるのだということを証明せんといかんわけでして、そのノウハウをいかに段階的に積み上げていくことが当座の目標になると思う。
で次にやることはセリフのあるシナリオで10分以内のモノを手間をかけずアタマを使わずにとっとと作るかだ。一番簡単なのは、原作モノをそのままシナリオ化することなのだけどなかなか適当なものって無いのだよね。小説にせよマンガにせよ短編は、マジメな内容でだいたいオチがあってナンボだったりするので、アクション映画バカのわたくし的にピンと来るものが少ない。マジメなドラマを作るにはまだチカラ不足な集団だと思うし、途中で作っていてつまんなくなる可能性が高いのですね。そうするとなーんだと空中分解することも考えられる。うーむ色々悩んで書棚や図書館、ネットを漁ったが心理的なものばかりで構成がきっちりしすぎているので映像化しにくい。結局落ち着いたのがPKディックの短編集。そのなかから選んだのが「マイノリティ・レポート」。これってスピルバーグが監督したじゃん、ってその通りですが、それがなにか?(あ開き直った)
原作ではトム・クルーズの役はかなり違うし、ある意味まったく別のものだ。原作はディック特有の被害妄想気味の疲れた警官が出てきて現実崩壊していく話。まずストーリーを理解するのがちょっと時間がかかる。そして果たして映画になるのかどうか。さっき書いたことと矛盾するんだけども、ようするセリフに頼らずシーンの中の行動(アクション)で物語が進行することができるかどうかで、これを確認しないとあとで修正できないしつまらないものになりやすい。小説というものを映画の形式に変換できるかということかな。よく原作者が映画化で原作が滅茶苦茶にされたと怒るのは、この作業における小説と映像のオモシロさの引き出し方の違いを指す。まあなんとかなるかなと見切り発車する。うまくいかなくなったら、爆発して最後でみんな殺しちゃえばイイのさ。
次にシナリオ作成作業だけど、まず本をスキャナーで全部取り込み、OCRを立ち上げてテキストデータ化する。いまの読み取りソフトは優秀だねえ。かなりすばやく読めるし誤字脱字も少ない。確か40ページくらいある原作を、地の文章とセリフを段落で分けてシナリオの形式にする。そして片っ端から地の文章を削り、意味がギリギリ通るくらいのものに簡素化する。セリフも同様に減らす。本筋に関係ない人物やエピソードもカットする。そして場所別にシーンを割っていく。この段階でA4で10枚くらいになる。うーん、長いなあ、まともにやると20分くらいになるかな。しかも果たして面白いのかどうだかわからんシナリオだ。これを他人が書いたのならケチョンケチョンに言うだろうな。セリフがまだまだ長いがあとは現場で削ることにする。どうブラッシュアップしたらいいかわからん。これ以上削ると意味不明になる。SFは設定の説明をしなきゃならないから、その部分で時間を取られる。端折るとわからなくなるしさ。『アルファビル』なんかもギリギリというかアウトに近いよね。そういうことは置いといて(オイオイ)、まったくアタマを使わずにきわめていい加減に作ったシナリオ。これでも映画はできるのですよ。作ってしまえばね。
ということで今回も例の面子、4人の男たちだけで作ることになりました。6月の終わり梅雨の谷間の蒸し暑い日曜日の撮影です。場所はまたまたチバの新興住宅地。ちょっとクローネンバーグの研究都市っぽくなるかなと勝手に想定しましたわ。シナリオをネットで配布したら、「できるんですか?」という返信メールが殺到した。任せなさいと答えたけど、本音は撮り終えるかどうかは半々だなと計算していた。なるべく撮りきりたい、まだ仕上がりを予想できないから2日に分けるとみんな飽きるからね。
タイトルは仮題で『神の庇護の下の至福』。これは、ロシア語で白痴のことです。

この間にも草映画の「旅の仲間」を増やすべく、酒宴を開いたりしてたんですが、呑み屋にDVDも持って行ってノートPCで観せるなんて時代になったこと自体に私なんかはカンドーしてしまっているのに、乗ってくる人と来ない人が半々で面白い。まあ現場に来れば、昔取った杵柄でみんな身体が反応するだろうから心配はしていないけどね。うまくゆるく繋がれるといいんですが。またそれはこの次のハナシで。