棒ノ折嶺

今日は奥多摩の大岳山を五日市方面から周遊するか、雪の具合で浅間嶺を縦走するかにしようと考えていた。
天気の回復するのを信じて7時出発。一瞬晴れ間が見えたがすぐに曇る。青梅マラソンの交通規制が始まる前に青梅市街を抜ける頃ポツポツと降り出して、武蔵五日市の払沢の滝の駐車場に9時に着くと傘が無いと濡れてしまうほど強くなる。辺りの山々もガスがかかって煙ぶっている。
とりあえず様子見で滝までぶらぶらと行ってみる。遊歩道を500メートルくらい行くと、カラフルな雨具を着込んだツアーらしき団体の行列に出遭ったので道を譲る。しかし30人ほどいたが挨拶を交わしたのはわずかに3人だけだ。マナー知らずが。
払沢の滝は高さ20メートルほどの3段くらいの滝で、毎年冬になると前面凍結してそれが見せ物なのだけど、全然凍っていないなあ。まあいいかと一向に回復しない天気を気にしながら戻る。
結局きちんとした雨具が無いので、予定を変更する。三頭山という手も考えたが、あまり状況は変わらないし、奥多摩周遊道路は積雪のため前面通行止めだ。
クルマで道を山奥へと進み上野原方面へと左折し山越えをする。甲州街道へ出て相模湖畔の石老山を目指す。こっちなら雨止んでないかなと思ったが、…結果は変わらず。大垂水峠を越えて高尾山の近くを通るが登るには半端だ。八王子に出て国道16号線福生、横田米軍基地を横目で見ながら、ひたすら戻る。雨足は弱まる。
狭山周辺で山がちらりと見えた。そうだ棒の折に行こう!ということでまたまた名栗の棒の折、白谷沢登山口に着いたのが12時30分。
思ったよりも寒くはない。まあ5℃くらいか。最初からちょっとハイペースで歩いてみる。勝手知ったるコースなので脇見をしないで行く。足元はぬかるんでいない。ひょいひょいといくつかの岩を越えて登っていく。沢を渡りようやく沢の間を抜けて行くこのコースのメインに差し掛かる。
渡河を繰り返すうちに靴に水が入ったようだ。一応防水なんだけど酷使しすぎなのだろうか。
鎖の手すりが現れた急な階段の辺りから雪が出てきた。雪が昨日からの雨のせいかシャーベット状になっていて思いのほか滑る。このあたりになるとオーバーペースが堪えてきて速度が落ちる。汗で珍しくダクダクになる。ここ数日体調がおかしいダルいかったのは運動不足だったためか?
コケないようにして林道との合流地点に着く。ここまで40分くらいで来た。8ヶ月前に最初に登ったときに較べると格段の成長だ。休憩していると雨がまたぽつぽつと降ってくる。空を睨んでも西の方がどんよりとしている。
体勢を立て直し急傾斜を行く。ここでは靴のかかとにある簡易滑り止めを出してみるが、シャーベット状の雪だとずるずると滑る。山の斜面を横に行く道に出たんだけど、足元が怖い。片面はいわゆる切り立った崖のようなものだから落ちないように山側に身体を傾け踏み込んで歩く。
私は左目の視力がほとんどなく右目でしかモノ見ていないので遠近感がものすごく掴みにくい。バスケットボールのシュートとかも下手だ。こういう斜面に来ると、両目の高さについての距離感覚がヘンになり目が回っていまにも落ちそうだと思ってしまう。
はらはらしながらそこを抜けて岩茸石の分岐に着く。ここから頂上まで60分だけどまた雨というか雪が強い風とともに顔に叩きつける。これから先は急坂で積雪もあるだろうしなあ。時間的に日没までには戻れるだろうが、雨が降ったら困る。そこまで無理をすることもないし「山は逃げない」のだからということで、林道方面に下ることにする。そこからまた白谷沢のコースに戻りひたすら下りる。クルマに戻ったのは15時過ぎ。

いま壮絶な遭難記録とかを読んでいる。山登るのにそんなの読むことは無いのだろうけど、JGバラードの「クラッシュ」のようにココロ引かれるものが無いとは言わない…ような気がする。雑誌「山と渓谷」3月号に奇跡の生還として、スティーブンキングの短編のような壮絶な記録が載っている。一人でロッククライミングをしていて手を岩に挟まれてしまった人の話なんだけど。心臓が弱い人は読まないように。映画『運命を分けたザイル』も観たいなあ。