草映画12

先回書き忘れたが、完成作品『悪魔の屍』は4分30秒になった。5分を切りたいなとタイトに仕上げた。タイトルは不吉な単語をテキトーに並べ、いままで誰か使っているかをググッて決めてみた。なので深い意味は無いです、ハイ。完成したビデオを観たうるさがたの現役ディレクターのNが「風に煽られる木々のシーンを観て久しぶりに映像にドキドキした」と言ってくれた。まだまだビデオでも人を感動させられると喜んでしまう。

さてあまり先を急ぐと書くネタが尽きるので、今回は「照明Tips」を書いてみます。
映画のメイキング映像を観るのが好きだ。どんな機材を使ってどんな方法で撮影しているかその秘密をみることができるからだ。現在の照明は自然光を基準にするものが主になっている。昔のようにバカでかいライトをたくさん当てることもない。いまやレンズとかフィルムなどなどの機材や材料の性能や感度が上がったことが大きい。昔は暗いと物理的に写らなかったのだけどいまではかなり暗くても写る。極端なことをいえば、ビデオより35ミリフィルムの方が簡単だということができるのだ。実はフィルムの表現の幅はビデオよりかなり広く、しかも照明など多少無くても、または下手でもいい加減な腕のキャメラマンでも映画的(あるいはフォトジェニック)に写ってしまうのです。
さてそれよりも問題は草映画だ。ビデオで映画のような表現をするためには、照明がものすごく重要な役割を持つと思う。ビデオ(テレビ)では影は重視されないが、映画は影と光だ。ビデオでいかに影を作り出していくかが最も重要な課題だと思う。
これまでの撮影と編集時の加工の実験で撮影時に露出を絞ってビデオの30コマを24コマに変換することで影がかなり出るようになり、コントラストを強くして黒を出していくことでかなりVシネチックに画面が出来ることはある程度わかってきた。(こういうプラグインも売っている→)
http://www.adobe.co.jp/special/premiere/redgiant_descrip.html
なので照明のテクニックも映画と同じに考えて良いだろう。実践的な屋外と室内の照明Tipsを書いてみる。
大体外で撮影するときに面倒くさいからライトは持っていかないよね。でもレフ板を使って逆光を補正するだけで画面が全然違うというのはわかると思う。レフ板はダンボールにアルミホイルを貼るだけで充分に役割を果たす。格好つけるならカメラ用品専門店でプロ用を買えばいい。
強く当て過ぎてもテレビドラマのようなピカピカな画になる。できるだけカメラより高い位置から距離を離して少し鼻の影が残る程度に当てるのが美しい。レフを置くポジションは決まっているので微調整は角度と距離で行う。レフを当てるもうひとつの理由は背景を白く飛ばさないためだ。どうしても光に注意してカメラ位置を決めないと背景が露出オーバーで飛んでしまう。ようするに逆光で撮って人物に露出をあわせる場合ですね(逆光補正)。このとき背景に露出をあわせて、暗くなった人物にレフを当てれば背景が白く飛ばないのは自明です。全体の画調の統一感からいっても不可欠なテクニックです。逆に順光で撮りながらわざと人物の顔に影を落として(擬似逆光だね)、画面にアクセントをつけるテクニックもあるのだけどもこれはまた別の機会に。
もっともレフは太陽の反射光なので晴れていないとこれは難しい。でも曇りの日でもアップのときは威力を発揮するのでなるべく使うと良いです。
室内での撮影では外光が入る場合(昼)と室内の照明だけ(夜)という二種類がある。かつて(いまも?)照明を使うときに、太陽光線と人工光線を混ぜることはタブーだった。なぜかというと色温度が違うためだ。
http://national.jp/college/akari/
太陽光と人工光を混ぜると太陽光と人工光の色が違ってしまうのだ。まあこの辺は映画やテレビで観たことがあると思う。室内がノーマルな色でも窓外だけ青みがかっているとかね。あと地下鉄のコンコースが鈍い緑色の蛍光灯の光だったりするのが、昔の手持ちカメラのゲリラ撮影の風景などを思い起こしてもらうとわかるだろう。
そんな状況は21世紀ではほとんど解消されてしまった。これは照明機材の発展ということですね。便所の暗いランプでもいまでは、同じワット数でものすごく明るくなってます。照明器具売り場に一度足を運ぶと様々な明るさのランプがあることに気づくと思います。ここで注目するのは、自然光、太陽光に近い色合いと謳っているやつです。問題は多少値段が高いところですな。また蛍光灯も色が緑がかることは無くなり、ちらつくこともなくなった。要するに太陽光とこれらの照明を混ぜて使っても色がヘンになることはないのです。
また太陽光が足りないときにこれらをレフ代わりに補光の照明として使えるのです。この手の機材で一番軽いのは蛍光灯を何本かまとめてライトにする照明器具だ。演者もまぶしくないし自然な明かりを手軽に操ることができる。90年代の初頭からプロの現場で使われ出したテクニックです。これなら充分個人で工作できます。プロの機材でも似たような機材があります。撮影監督のダリウス・コンジ(『セブン』、『エイリアン4』)の間接光照明はこのテクニックの賜物です。
http://www.kokusai-shomei.com/kinoflo/kinoflo.htm
それでも光が足りないとき、夜の室内とかで蛍光灯だけでは暗いとき、写真用照明機材を使うこともできる。アイランプなど強めのランプを仕込み布製のディフューザーで光を和らげることで全体的に柔らかいが明るい光が回る。
http://dejicame.net/htm/satuei_youhin/satuei_youhin_top.htm
光が多く当たるということはそれだけ露出を絞れるし、影が美しく出せるということなのだ。
昔ながらのアマチュアの照明のやり方、アイランプで照明をすることもできるが、もっとお手軽に美しくできるやり方が工夫すればまだまだいくらでもあると思う。
ライティングって大変そうと思うかもしれないけど、『ラストタンゴ・イン・パリ』『地獄の黙示録』の撮影監督ヴィットリオ・ストラーロは、ハリウッドの撮影監督がトラック数台分の照明機材で作り出す効果と同じ効果を、わずか数基の古い照明機材で作り上げるという。要はセンスなのですね。まさに光で描くということですね。