映画は陽炎の如く

映画は陽炎の如く

映画は陽炎の如く

百歳を越えた、脚本家・監督としての筆者の自伝。まわりはみんな死んじゃったから言いたい放題怖いもの無し。でもそれほど映画史的にみて面白いことが書かれているかというところでの資料的な部 分はどれくらいあるかはちょっと疑問。
戦前、松竹京都に入り、サイレント時代からシナリオを書き始め、長谷川一夫のデビュー作で監督をするようにもなる。その後阪妻のプロダクションに入ったり、日活に行ったりして、座頭市のライターとい うのがわかりやすいのではないか。
いわゆる有名監督はほとんど出てきません。松竹京都の周辺の人々が主な登場人物です。しかも、シナリオが良くないと映画はダメだと言って監督をしなくなった人ですから、手厳しい。 長谷川一夫の顔 斬り事件の真相(これはマキノの自伝と読み併せるとおもしろい)。衣笠貞之助の人格の悪さ。阪妻のエキセントリック さ。永田雅一のカツドウヤとしての人物像などが描かれる。
またカツシンについては、座頭市の続編をタダでシナリオを書かされたと裁判を起こして敗れるまでを克明に記録し、 墓石をひっくり返す勢いで罵倒する。そして最後にそのシナリオを掲載するしつこさ。
人間さいごまで生き残った者は強いですな。