鐘撞堂山

土曜日、2週間ぶりにゆるりと出掛ける。天気は良いが風が強く寒い。富士山も雪を被ってくっきりと見える。およそ一時間で埼玉北部もうちょっとで群馬という、荒川沿いの町寄居に着く。車を町の外れ荒川の南側にある鉢形城跡公園の無料駐車場に停め10時30分ごろから歩き始める。
とりあえず寄居駅に向かう。橋を渡ると荒川の清流が美しく川底の大きな一枚岩の抉れた様子が上流の長瀞を思い出させる。気分はほとんど観光地。やがてひと気の少ない市街地を抜ける。八高線秩父鉄道が通る寄居駅の高架ホームを越え、国道140号バイパスの車の流れを渡り、町の北にある低山の鐘撞堂山を目指す。今日は中高年のグループの登山客が目立つ。「なんかハイキングでも行かない?と呑んだ勢いで言っちゃったはいいが、まさか本当に行くとは思わなかったよ」というご様子のお父さん方や、けたたましい笑い声の昔のお嬢さん方があちこちにいらっしゃり、道を塞いでいる。彼らを追い抜きながら、駅から20分ほど歩きやがて人家も少なくなり、ようやく林道に入る。雪はほとんどなくすこしぬかるむ程度で歩きやすい。だらだらと坂を上っていくと手入れされていない竹やぶがあったりする。無造作に生える竹が勅使河原宏のいけばなのようだ。なんてことを考える余裕のなく、息が切れる前に20分で標高330メートルの頂上に到達。
簡単な展望台も設置されているので登ってみる。関東平野が地平線の向こうまでまっ平らに広がり、新宿の高層ビル群のみ突き出ている景色は見事です。東には茨城の筑波山が意外と近くに見える。桜の木があちらこちらに植えられているので枝でいまひとつ眺望が開けない。お花見には最高なところだろうな。
先着していたハイキンググループは豚汁を作っていてこれから宴会のようだ。こちらも昼なのでおにぎりを食べる。動かずにいると少し曇るだけで冷え冷えとしてくる。ぶらぶらと山を降りながら周遊コースを進む。すぐにコンクリートの舗装された林道になってつまらない。しばらく行って車道に出ると観光ハイキングコースなので食堂兼土産物屋などがある。
円良田湖に向かう道と分かれ、また少し登ると山頂広場に出る。ここから麓まで登山道沿いに江戸時代に置かれた500体の羅漢像が並んでいる。ひとつひとつ顔や姿が違っていて面白い。ゆっくりと眺めながら歩く。このコースは里山っぽいので暖かくなった春の芽吹き時くらいがきれいそうだな。山から下るとそこは少林寺という寺。お賽銭(10円)とご燈明(50円)をあげ、集まってきた野良猫たちとカロリーメイトの残りを分かち合う。
ここからはまた田舎の国道歩きになるのでダラダラと1時間ほど行く。市街地に戻りふたたび橋を渡り、鉢形城の跡を歩いてみる。いまは県の樹木展示林としていろんな木々が植えられ林になっている。川を背にして作られた戦国時代の城で小田原の北条氏の領地だったそうだ。いまも堀とか土塁の起伏が残っている。城跡から見ると対岸に数寄屋造りの立派な旅館がみえる。もしかしたら池波正太郎小林信彦の書いていた旅館かなと思って、あとで調べたら鮎料理で有名な(コース6000円)京亭というところ。夏とか風情がありそうですなあ。
ただね、池波正太郎の舌って、昭和初期の人の感覚なので、通ったという店をいくつか行ったことあるけどさ、脂っこい、甘い、濃い目の味が好きなんだよねえ。
その後公園にある資料館などを見学して、陽の高いうちに帰宅。これじゃ近所のウォーキングと変わらないですね。来週はもうちょっと骨のあるところに行くことにしよう。

<参考>
http://www.yomiuri.co.jp/tabi/yama/okumusashi05.htm
http://mytown.asahi.com/saitama/news01.asp?c=13&kiji=136