ブラッドベリがやってくる−−小説の愉快

ブラッドベリがやってくる―小説の愉快

ブラッドベリがやってくる―小説の愉快

これを読むとレイ・ブラッドベリが短編作家であることがよくわかる。彼の好きなことはアタマのなかにすでに存在していて、サーカス、バック・ロジャース、屋根裏部屋、図書館、闇夜、小人などなどが、ふとアイディアが浮かび机に向かうと、それらが無意識のなかから現れてが彼に書かせる。だから作家のテイストはいつも充分に味わうことができるが、言い換えればいつも同じと言うこと。都築道夫が「独特の美文にさいしょは夢中になったが、じきに飽きてしまった」というのもわかるような気がする。だけど創作術について書かれた「禅と小説」はおもしろいので立ち読みでも。

「いまの時代でも、いつの時代でも、もっと「創造的な」作品が、書かれて、売れてもよいのではないか。思うにおもな原因は、私が論じたような仕事の方法を知らない作家が多いからだろう。「文学的」と「商業的」の二分裂で考える癖がしみついているせいで、中道路線にはレッテルを貼り忘れ、ろくに考えもしなかった。それこそが、誰にでも適当で、気取り屋も売文業者も、気持ちよくストーリーを生産していける創造プロセスなのだが。いつもの癖で、われわれは二つの名前がついた二つの箱に何でもかんでも押し込んで、それで問題を解決した(つもりになった)。どっちの箱にも入らないと見られたものは、どこにも行き場がなくなった。そういう頭の切り替えないかぎり、作家たちは自縛を解けずにいるだろう。」