コーネルの箱

コーネルの箱

コーネルの箱

詩人のチャールズ・シミックジョゼフ・コーネルの作品に触発されて自由に綴った幻想的なエッセイに、箱の写真が15点挟まれている。たとえ読み返すことがなくともいつまでも手元に置いておきたくなる本。

 ゲーテアンデルセンルイス・キャロルはみな自分のミニチュア劇場を持っていたという話をどこかで読んだことがある。そうした劇場が、世界にはほかにもたくさんあったにちがいない。我々は当時の歴史や文学を研究する。でも、ただ一人の観衆のために上演されていたこれらの劇については何も知らない。(104頁より)


コーネルは好きですねえ。箱はもちろんだけど、彼の映画作品というのを観たい。1930年代のハリウッドメロドラマを物語に関係なく彼の好きに繋いだ短編『ローズ・ホーバート』はシュールレアリズムの隠れた傑作と言われていて、上映の際にサルバドール・ダリが「俺のアタマの中のアイディアを盗んだな」と掴みかかったらしいが。
映画が夢の論理でできているのなら、さらにそれを編集して自分だけの夢に変えてしまう究極のレディ・メイドだよなあ。この人とかヘンリー・ダーガーとかタランティーノとか通じるものがあると思う。伝統的な流れの芸術作品を作る技術は無くても、そこらへんに転がっているガラクタを組み合わせのセンスと偏愛だけで芸術作品に変えてしまう不思議なチカラを持っている。みなが「自分の夢を盗まれたかの如く」ハッとするが、でもどこかいびつで殺伐としたよそよそしさに「どうしても埋められぬ距離」を感じてしまう作家たち。まさに20世紀のアメリカなんだよなあ。などいろんなことを考えてしまう。

・こんな映画らしい(一番下)。
http://www.kyoto-seika.ac.jp/fleur/2001/joseph/
・さらに詳しく。
http://www.cmn.hs.h.kyoto-u.ac.jp/CMN7/cornel-japanese.html