棒ノ折嶺

ryotsunoda2004-11-24

うー、だるい。肩と右足のふくらはぎが動くたびにギシギシいうし、オマケに少々の悪寒と頭痛もする。ったく。サイテーだ。
日曜日、7時西武池袋線飯能駅集合。今回はパワー登山氏と7月以来の参加の友人氏で計3人。山に向かう途中、パワー氏の提案で、6月に挫折した棒の折嶺に再挑戦しようと当初と計画を変更する。そもそも週末登山をはじめたきっかけが、この棒の折嶺だった。とりあえず手ごろな山を登ってみようと行ったはいいが、全然登る体力が無くひーひー言ってる脇を軽々と抜かしていく還暦夫婦登山者たちの冷たい視線を感じながら、南極探検隊のアムンセンとスコットの逸話で言い訳をして途中で引き返した。その屈辱感をバネに山登りがスタートした(というほどのモンじゃないが…)。
で二度目の挑戦は、勝手知ったる沢沿いの道を一定のペースで登る。あっけなく前回挫折した休憩地点に出る。2時間掛かったところを1時間で来た。記念撮影してリベンジと健闘を称え合う。
さらに1時間、急勾配になった登山道を行くと、広く空が開けた頂上に出る。快晴で晩秋の秩父の山々がすべて見える。ここはメジャーな山なので次々と人が現れて、一時は20人くらい休憩して景色を眺めていた。ぽかぽかとした小春日和の中、早い昼飯を食べる。チーズバーガーと具入りミネストローネスープにコーヒー。寒くはないがやはり冬間近です。人がどんどん増えるので退散する。
尾根沿いにしばらく歩くと人影が無く、なだらかなアップダウンが続き、紅葉も盛りを過ぎて一面落ち葉が広がる自然の明るい林を抜けていく。途中下るはずのルートが通行止めで、仕方なくしばらく行くが、でもこのまま行くと、さらに9時間は歩かないと帰れないことに気づき、途中で見えた林道を通って下山することにした。このとき手元には大きな地図しかなく細かいルートはわからなかった。
しばらく行くと林道からふたたび植林を抜ける登山道があったのでそこを行くことにする。右手が杉林、左が自然林、その中間の10メートルの幅の開けた防火帯の道に落ち葉が溜まってふかふかと歩きやすい。さらに行くと道が途切れていると思った、が、近づくと急傾斜で下が見えなかったのだ。ほぼ直滑降40度以上、転がったら尻をつかないとどこまでも行ってしまう。はじめは喜んで落ち葉を蹴散らしながら下っていたが、これがどこまでも続き、膝ががくがくしてきた。それでも捕まるところがないと落ちてしまうので木から木へと伝わりながら下りる苦行へと変わった。
格闘すること30分、ようやく沢やふもとの気配を感じたところで、ん、踏み跡のルートが消える迷ったか?でも下の河原がそこまで見えてる。詳細な地図が無いのでこのルートが正しいのかわからない。先頭のパワー登山氏が踏み跡があると言いどんどん下りていく。仕方ないので着いて行くが、到底人が行き来できるところではない。斜面にある大きな岩にはコケがびっしりと生え、水が滴っているために滑る、足元も緩く踏むたびに崩れ落石する。捕まる岩も脆く、指を二本かけて全身を預けたりしないと落ちてしまう。ものすごく時間がかかる。一度足を滑らせて3メートルほどずり落ちて尻と背中をしたたか打つ。腕の力だけでフリークライミングが如くまた道筋まで登っていく羽目になる。ようやく全身の筋肉が痛く精神的にも恐れで打ちのめされ河原に出る。先に下りた二人がのほほんとした顔で良かったねと拍手したので、なにが良かっただ!とキレる。
山登りの基本の基本として、「道に迷ったら下ってはいけない、元のルートへ上がらなくてはいけない」というのがある。その理由は迷って下っていけば大体沢に出くわするがもともと道が無いような場所のだから、そういう沢は最後には崖に達し、滝となることが多い。そのときには先になだらかな麓が見えたりするので、体力と気力を消耗している登山者は無理をしてでもその急な崖を下ろうとして遭難する。
まさにそれだろうがいまやってきたことは。今回は上手く行ったから良いようなものを条件としては怪我してもおかしくなかった。スリルと危険は違う、山登りをしているとその人の考えがすべて行動に出てしまうが、パワー氏の場合はあまりにも自分の体力技術を基準に行動し、どうにかいけるじゃんと同行者のことを考えられなくなる傾向がある。一緒に行った者のことを考えれば引き返すはずを、その勇気がなかったと思う。結果オーライでいえば、キレた私が過敏な臆病者ということになるのだが、いまでも戻るべきだったと思っている。いかに低い山でも登山道を外れると遭難する可能性があるかよくわかった。ましてや経験半年の勝手無流の素人登山者はもっと謙虚になったほうがよいだろう。パワー氏と今後一緒に登山するのをちょっと考えてしまう。
泥だらけになって河原に出たはいいが渡るところがない。靴を脱いで水に入るが、わずか川幅5メートル深さ10センチ、水温は3度くらいじゃないかな。途中でガタガタと震えてきた。向こう岸に着いて、ずっと怒っていても仕方がないので、魔法瓶を出して、まあ暖かい紅茶でもどうぞ。ところでいま何時かなとポケットに手を突っ込むと…。時計代わりの携帯電話が無い。まあ無くなってもそれほど困らないしここは圏外だからなあ。再び渡河して探す。パワー氏は下ってきた急斜面をまた登って探してくれるが…。君は筋力があるかも知れないが、これで怪我したら二重遭難の典型的なパターンだよ。やはりわかっていない。目を凝らしていると木の間に挟まっていたシルバーボディを発見。一件落着。再々度河を渡る。身体が半ば凍ったような気がする。ぱらぱらと雨が降ってきた。すでに体力は無し。ようやく舗装路に出てクルマまで戻る。行程6時間。
帰りのクルマでほんやりと考えたこと。
1.詳細地図が無いルートは行かない。
2.体力の無い者に合わせられない人とは登らない。
(どちらも基本ですが、ホント山は登るたびに教訓をくれます)