草映画5

撮影のために、ビックカメラ大宮店に行き、照明器具アイランプ300Wスポット、500Wフラッド、ゲージ付とソケット×2個を購入。フジフィルム製のゼラチンフィルター、NDの濃いのも買ってみる。あとは、黒ラシャ紙、トレーシングペーパー、ブルーとオレンジのセロファン、ピンチ(アルミの洗濯バサミ)、ブルーバック用の布(90×200cm)、カポック(大きな発泡スチロール)、黒ガムテープなどなどを100円ショップとホームセンターを駆けずり回って集める。レフ版は、ダンボールにアルミホイルを貼るだけのもの。映画撮るというとすぐカチンコ(ボールド)を買いたがる輩がいるが、そんなものは必要なーいし恥ずかしいので却下。等々〆て20000円弱くらいの散財。
そんなこんなものをコンテナボックス(ビールケース大で農家の野菜収穫箱に使うらしい)に詰め込んで出かける。

今回ココロに誓ったのは、
ゆっくりと進め、考えているスピードの半分以下で撮影段取 りをして、撮影の手順を理解させる
怒ったり、声を荒げたりしない
完成度よりも、撮影自体を楽しむ
カントクぶらずに雑用でもなんでもやる
自分のアタマだけで完結せず、紙に書いたりして現場で悩まない
命を懸けた大作とか仕事とかじゃないので、プロの現場のようなノリを求めない
これらを簡単に言うと“これは草野球と同じなんだということを忘れるな”です!

3日前にメールを流して、祭日の朝から集まってくれるのは、独身ばかりだからだろうなあ。こちらも気兼ねなく無理を言える。メンバーは合計5人。地元マンションに住むサラリーマンのMo。彼の元同僚のF。ディレクター業のN。ライター業のMi。本当の撮影を知っているのはNとMi。あとのふたりは映画好きだが撮影のノウハウはまったく知らない。
3月21日。千葉の最果てのニュータウン。ほとんど成田だ。まだ宅地マンション造成中の本当のチバ・シティ。
ぽかぽかの晴天。午前10時30分集合なるも、あまりにも遠いので11時30分到着となる。半端なので駅前にある唯一のファミレス、サイゼリアで昼食兼顔合わせ打ち合わせ。安いはいいが味気ない。まあ何度か通ううちに皆でほとんどメニューを食べつくすことになるのだが…。
当日のシナリオもどきが見つからないので、そのうちに発見したら転載します。(ってほどのこともない走り書きメモなんだけど)
とりあえず、ロケ場所探しに歩く。決まったのは数年後にはマンションが建つだろう500メートル四方の赤土がむき出しの巨大な四角い穴ぼことその周辺。仮面ライダーの決闘の場ですな。
早速スティディカムを取り出す。アルミパイプを繋ぎ、ねじを留めて、使い終わった乾電池を錘にして、カメラを取り付けて、上下左右前後のバランスを取る。カメラはSONY TRV-950。3CCDタイプでテレビ番組取材のサブカメラとしても使われる。お手製スティディカムは微妙な調整ができず、すぐにねじが緩みバランスが崩れるので、最後はガムテープでぐるぐる巻きにして固定する。見た目は悪いのお。
早速、階段を登るカットを後フォローしてみる。登場のFとMoは頼みもしないのに怪しい殺し屋ファッションを着込み、モデルガンを持参していた。何パターンか撮ってモニターを見ると予想していたよりもスティディカムじゃんという動きになる、俄然やる気が出てくる。私がカメラを操作していると、所有者のNがじれったそうに貸せといって、撮影を代わってくれたので能率が上がる。
そのあと走る、撃つ、死ぬ、とカットを重ね、3時間で14カットほど撮る。久しぶりに人間に演技をつける。といっても細かいクセの修正くらいで、画面に美しく映るようにメリハリと立ち位置を決めたくらい。Miは自主映画をよく知っているのでそういう指導はいらない、勝手に演技してもらう。ジェームズ・コバーン好きのMoが意外にも演技が達者で(特に死ぬアクション)皆驚く。こういうカメラが愛してしまう映画の演技ができるタイプが時々いるのです。ビール休憩のあとマンションの一室で照明を炊いて2カットを撮る。ビデオの照明の具合がいまひとつピンと来ないので、細かく凝らずにNとMiに任せることにする。
私も出たがNから「20年前と演技のパターンが変わってない」といわれる。ほっとけ。
18時で撮影終了。お疲れさん、じゃあまあビールでも飲みながらプレビューしようかと、パソコンのビデオ入力に接続して、今日の撮影カットを確認しはじめてところで、この泥縄方式の草映画の新たなる展開を迎えるのであった…(大げさな)