ZERO

ZERO〈上〉 (幻冬舎文庫)

ZERO〈上〉 (幻冬舎文庫)

ZEROとは警察庁公安のなかに置かれた影の部隊。かつてはサクラ、チヨダと呼ばれていた。しかし、だ、本書で活躍するのは警視庁の刑事だ。ZEROは悪役として描かれる。
 中国と日本を股に掛けたエスピオナージがストーリーだ。舞台は東京から北京へ、登場人物も中国の秘密警察、人民解放軍諜報機関公安警察、永田町の政治家、自衛隊、なぞのスリーパーとしての中国スパイ。かれらが入り乱れて物語が展開する。結構派手な小説だ。
 ただ、人物造型の平坦さ、ドラマの先が読めちゃうミステリーを書くテクニックの稚拙さ(だれかが重要なことを言おうとするとすぐに横槍が入って忘れられちゃうというのが何度もある)が不満な点。ジョン・ル・カレトム・クランシーが好きなら大丈夫でしょう。