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99ダーレン・アロノフスキー(ビデオ)

 ヒットしたのは、渋谷の地面にπの文字を蛍光塗料で描いたギミックじゃないだろうか。ナイトレイトショーを観る客には、心地よい「ああ、映画を観た」というタイタニック効果を与える点で良くできた作品には間違いない。危険さも安全さも枠内なので引くことものめり込むこともない。
 アイディアとしては短編のそれなので、果たして展開できるのかと思ったが、案の定というか妄想系引きこもりを延々と繰り返す能のないストーリーとなってしまった。作品としての想像力が現実を起点としているが、結局そこから広がっていかない。従ってカタルシスも得ることが出来ない。破綻のない作品を作るが、低予算でやっている分には問題ないだろう。
 昔で言えば、プログラム・ピクチャーの人なんですね。たとえば、RKOロバート・ワイズとかジャック・ターナーのような監督。現実をねじ伏せるほどの力量はない。
(角田)