由美香

 恥ずかしくてAVはあまり観た事の無い私だが、エロ漫画は平気なので、林 由美香については、「職業AV監督(原作;カンパニー松尾、画;井浦秀夫.秋田書店ヤングチャンピオンコミックス)」 で予備知識は有った。かつてはAVアイドルで売った彼女ももう26歳。この業界でははっきり言って大年増だ。しかしこの女優の監督を惚れさせてしまう魔力は健在で、7年越しの片想いを創作意欲のオブラートで包んだ平野監督が再登場した。
AV製作のプロが公私混同しようがなにしようが、会社としては売れれば良い訳で、この作品を撮る上で社長が放ったたった一つの条件(館主にならってここでは伏せます)は、まさしくシンデレラの馬車をカボチャに、我々とは少々ずれてはいるが、監督平野や林 由美香を日常に連れ戻す魔法の言葉だったのではないだろうか。旅の終わりにこの条件が出されなければ、二人は礼文島で失踪または無理心中(当然平野が由美香を殺す)でもしていたのではないか。そこまでしなくても「社長、やっぱり撮れませんでした。」と土下座されておしまいだったかもしれない。それほど途中の旅の積み重ねは真綿で首を絞められるような緊迫感がある。そこまで読んでいたかは解からぬが、さすが社長。プロの一言であった。
このAVを正月明けの暇な会社でアフター5に若手と観ていたのであるが、一人抜け、二人抜け、最後は「昔、林 由美香のファンだった。」という妻帯者と、最後の10分間だけ巡回に来て張り付いてしまった警備員と私の3人で見終わった。警備員は 「正月早々凄い物観ちゃったよう。」などと言いつつも満更でもない様子で帰っていき、それまでの130分間観通した二人はしばらく椅子から立ち上がれないでいた。
(森山)