双生児

双生児?GEMINI? 特別版 [DVD]
 99 塚本晋也有楽町スバル座

 乱歩の耽美世界を再現するのに、簡単なのは、風俗とガジェット(小物)の仕掛けでごまかす方法だ。しかし、この作品は真正面から繊細で大胆な色彩設計でその世界を造形したことで、結果、深みがあると同時に塚本ワールドが構築できた作品だ。あるものを撮影するのではなく、油絵か彫刻のようにひとつひとつごつごつとした厚みを持った手触りで作り上げていく世界。撮影を監督本人がやったのも大正解だ。
 ひたすら限定された空間の中で展開されるストーリー、人物の配置によって日本家屋の薄暗さ重厚な黒を基調とした映像が作品に深みを与えている。
 反対に、白と極彩色を基調とした貧民窟と川辺の外の世界は喧噪と猥雑さが際立って、日本家屋の静謐なシーンと正反対な白日の悪夢の世界を作り上げている。
 どちらにも共通したエロチシズムは『鉄男』の時から変わらない、人間と内部、外部を問わない異物の混入による人物の心理や外見の変化というテーマを押し進めたものではないか。双生児である二人は陰と日向の存在がやがては融合して一つの人格になってしまうのだから。まぎれもなく塚本ワールドの人物であると言えよう。
 メジャー映画でありながら大胆な個人映画を築きあげられる方法を塚本晋也は獲得した。
(角田)