千と千尋の神隠し

  01 宮崎駿(シネマメディアージュ)

 別にひとさまが喜んでいるもんに文句は言いません。不思議の国、鏡の国のアリスのパクリが多いなぞとは言いません。ただ指摘しておきたいのは、 宮崎駿も、ストーリー重視の時代から、体験インパクト映像の時代に移行した なということ。
 もともとインパクトのある映像を作るのがうまい人だったけれど、どこかで東映動画出身の性か、シナリオはきちんとしないとならないという考えがあったと思う。本来はシナリオの構成が下手にも関わらず、ストーリーを転がそうとして失敗ばかりしていたことにもわかる。『風の谷のナウシカ』はその最たる例だろう。自分がコントロールできるようになって、できるものがなんでも入っていすぎてパンクしてしまった。
 他の作品をみても分かるが、基本的にかれは自分のイメージの再生産をするのが好きなタイプだ。物語を進めるためにはめ込んで行くのではなく、イメージをはめ込んで行くためにシーンを作って行くタイプだろう。だからどうしても物語の流れが毎回似たものになる。まあ『もののけ姫』でまたやっちゃったと言う感じで同じストーリーにしかなっていない。その限界に気づいて一度引退なんて言ったんじゃない。
 今回はそれがほとんど払拭されている。イメージの羅列が優先されることが夢の論理として正当化されるので、物語のつじつまが甘いだろうが、やりたいことができる。 これが結構受けたので引退を撤回したんじゃないだろうか。
 それにしても今回も、最後の盛りあがるところでいつも、登場人物を二手に分けてしまい、それぞれを描く時に片方が単なるモブシーンとなるパターンが多く。それが 物語を散漫にする癖は治らないものかね。電車のシーンは戻るための手段でしかないんで物語のテンション下がるよな。
(角田)