サノバビッチ★サブ

00 松梨智子中野武蔵野ホール

 うーん、きついなあ。というのが正直な感想。敗因は一つ、きちがい女・松梨が主役じゃないことだ。だから彼女が出ている前半だけがおもしろく観られるんだ。基本的に確信犯的な悪趣味・妄想は彼女が画面に出てはじめてインパクトを持つ。だから他の誰かが狂気を演じていても、それは松梨のフィルターを通した面白さであって、肉感的にこちらまで届いてこない。
 今回の場合はインモラルな登場人物たちが遭遇する出来事がかなり読めてしまってツライ。おいおいオチはそこかい何か普遍的だなあ……、ずっこけました。
 ちょっといきなり自主映画の世界だ(もともとそうだが)。毒が効かないんだよお。笑いが並列なんだよな。主人公が絞り気切れてないのもなあ。あと、スプラッターねたは、『モンティー・パイソンホーリー・グレイル』ですでにやっているのでぜひ観るように。
 もともと時空間処理はめちゃくちゃな人で、それは演劇的で別に良いんだけど。今回は物語の時間配分に失敗していると思う。物語の中で数年たつとするときには、そのシーンも長くなり、繰り返しをいれることで時間経過を示しているのだけど、そのシーンのなかに飛躍がないので、映画のスピードが停滞してしまう。ちょっとそれが多すぎたんじゃないの。
 今回の問題は、いかにもコンピュータで編集しましたという感じの編集。入門書に「こういう風にはしてはいけません」というのを全部やっている。テロップの入れすぎ、エフェクトの使いすぎ。
 あと、音楽、音響の処理のまずさ。『毒婦マチルダ』は音楽のインパクトが作品を引き締めていた。今回は音楽がうまくはまってない。
 撮影はお金のないのは分かるけど、もう少し出来る人に頼んだ方がクオリティーあがるよ。バカコメディーで画面が見えず、セリフが聞こえないのは致命的だと思う。
 一年に一作撮るのは大変だと思う。しかし僕はきちがい女優監督、松梨智子を観たい。
(角田)