黒の天使 vol.2

黒の天使 Vol.2 デラックス版 [DVD]
 99 石井隆(シネマミラノ)

 石井隆の世界はどこまで有効なのか。これには、前から疑念があった。彼の作る世界が独特で強固であればあるほど、時代から乖離していくのではないかという不安。『死んでもいい』から『GONIN』の頃までは、バブルからバブル崩壊の時期を通じて人間を描いていけたと思うのだが、しかしその場合も冷静になるとどうしても時代がかった台詞や設定が嘘臭く感じることもあった。まあ、劇画チックという死語を使えばその辺りは分かって頂けると思うのだが。その辺りがリアルを越えてしまうとつまらないVシネになってしまうのだが、そこは演出で抑えられたと思う。
 問題はこの「黒の天使」シリーズである。前作も葉月里緒菜で失敗した部分が、天海祐希でもクリアされていない。ひとつは彼女たちが劇画のように動けない、アクションが出来ないこと。そのあたりをカッティングでごまかすのは石井演出ではないので、余計に動きが悪いのが見えてしまう。もう一つは、この 殺し屋という稼業が上手く描き切れていない部分にあると思える。石井隆の真骨頂は謎の男女が事件を通じて過去に翻弄されながらも、のたうちまわっている姿を描くところだが、今回も背負っている過去の部分が浅く嘘臭いし、映画にとって殺し屋の過去っていらないんだよね。そこが作品として成立させるためには齟齬をきたしている。だったら、名美と村木みたいに過去に会って今は敵同士の大和武士との関係を全面に押し出した方が良かったのではと思う。片岡礼子の起用にも?が付くしね。ちょっとストーリーをこなそうとして空中分解しているところはある。
 撮影と照明は、石井節が全開で、天海のアップなどロマンポルノのころのフィルムの質感があって良いです。石井隆にはもっと情けない男が主役の映画を撮って欲しいものです。
(角田)