シンプルプラン

シンプル・プラン [DVD]

 A Simple Plan  98 サム・ライミ(新宿武蔵野館)

 サム・ライミがブランクを経て、新しいスタイルで現れた。というよりも、今回のスタイルは彼がテレビシリーズ『アメリカン・ゴシック』などを手がけていたせいなのか、ストーリーを簡便に語る方向を全面的に押し出している。
 というのは、脚本が素晴らしく書けているので、敢えてカメラワークで心理の表現や観客の感情を揺さぶる必要がないと判断したためだろう。原作者による脚本は、人物配置、葛藤がアメリカ映画の定石のひっくり返しで反モラル的な一般人を描き出している。壊れた兄弟愛、貞淑だが欲深い妻、善人だが悪党になる男。彼らを運命の必然に追い込んでいく演出が冴えているし、役者が素晴らしい。大仰でなく、雪深い貧乏な田舎町にひっそりと住む人間の心理を丁寧に、切り返しの積み重ねだけで描ききっている。余計なカットが全くないミニマルな傑作だ。
(角田)