白 THE WHITE

 99 平野勝之BOX東中野

 『由美香』、『流れ者図鑑』と来て最終作はまさかひとりで厳寒の北海道を旅するとは思わなかった。旅を続けるものが見えなかった。今回は、旅に映画が呑まれてしまった感があるんだよね。監督のこだわりが一体どこに行ったのか、最後まで掴めなかった。ベクトルは“旅する自分自身”へと向かい続けたのではないだろうか。
 しかし、掘り下げて行くほどのものは無かったと思うし、そんなヒマも無かったのではないだろうか。記録者でも観察者でもない演出家は一体何者なのだろう。ゴールに向かうにつれてその意味がどんどん曖昧になり、風の音と車輪の音だけしかしなくなったのは、監督の映画に対する敗北ではないだろうか。もっと人間を撮って欲しかった。
(角田)